守護家を中核とする秩序が容易に否定されず家格秩序の根強い存続が認められる諸氏と比較・検討しながら、守護代家であった尼子氏が守護職を獲得するに至る事情を分析した結果、守護京極氏の家督後継者が断絶する中で、京極氏から尼子氏への国成敗権の継承がなされ、幕府もこれを保証・認定するというプロセスを経て、尼子氏の家格上昇が実現したことが明らかになった。尼子氏の覇権は室町幕府―守護体制に対する反逆・独立の中から生まれたものではなく、家格上昇に関する社会的合意を勝ちとる上で、守護家の家督・守護権の継承、幕府によるその認定という手続きを踏むことが大きな意味をもっていたと結論づけられる。
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