研究課題/領域番号 |
23520819
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中野 等 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (10301350)
|
キーワード | 豊臣政権 / 大陸侵攻 / 朝鮮出兵 / 植民地支配 / 歴史認識 |
研究概要 |
今年度も前年度に継続して、国立国会図書館本館・関西館で、植民地期の朝鮮半島で刊行された文献から、豊臣政権の朝鮮出兵に関わるものの精査・収集をすすめた。とりわけ、関西館のアジア情報室では植民地期に刊行された「京城案内」のような類の文献を多く渉猟することが出来、文献収集の対象に広がりがでてきた。また、改めて近世段階における朝鮮出兵の社会的記憶についても再精査を試み、内閣文庫・東京大学史料編纂所・名古屋市蓬左文庫・東京国立博物館での調査を実施した。蓬左文庫では朝鮮征伐記の採録をおこなったが、蓬左文庫には朝鮮征伐記を書いた堀正意関係の資料もあるので、再調査を実施したい。東京国立博物館資料室が所蔵する朝鮮出兵関係の資料は対馬宗家に由来するものと、薩摩島津家に由来するものとがあることが判明した。いずれも、非常に貴重な資料であり、収集をおこなったので、その内容については論文化を急ぎたい。 研究成果として刊行した論文は「唐入り(文禄の役)における加藤清正の動向」(九州大学『九州文化史研究紀要』56号、2012年3月)、および朝鮮出兵の前提となる豊臣政権の国内統一に関わる「豊臣政権の関東・奥羽政策」(『茨城県史研究』97号、2013年3月)などである。 また、研究成果の社会還元という面からは、熊本県立美術館・徳島市立博物館・長崎県対馬歴史民俗資料館・福岡市史編纂委員会などからの依頼をうけ、朝鮮出兵にかかわるテーマでの講演を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今次の科学研究費としては二年度目が終了した。前回申請した課題の延長上の位置する研究であり、そこでの成果もあわせ、戦前期の文献収集に関しては、かなりの達成度と考えている。今後も収集は継続していく必要があるが、最終年度を迎え稿本というかたちででも一度目録化する必要があると考えている。 また、朝鮮出兵そのものについても通史を刊行することで一区切りついてはいるが(『文禄・慶長の役』、吉川弘文館、戦争の日本史16)、描ききれなかった史実のあぶり出し、叙述内容の検証は不断に進めていく必要がある。そうした必要課から、加藤清正の朝鮮での動向を追う論文を執筆したが、同様の試みは今後とも継続していきたい。いささか関心が広がりすぎた嫌いもあるが、研究目的の達成にむけて順調にすすんでいるといって良い。
|
今後の研究の推進方策 |
課題は順調に進んでいるので、今後もこれまでと同様、江戸時代の古典籍データ、近代の図書・雑誌その他の記事を積極的に収集し、より完成度の高い目録を作成したい。研究成果の公表についても、これまで同様積極的にすすめるが、24年度は朝鮮出兵の記憶にかかわる論考をまとめることができなかった。これは大きな反省点であり、今後はこれまでの成果を踏まえ、とりわけ東京国立博物館で収集した資料はできる限り早急に考察を加えて、論考のかたちにしたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
東京国立博物館での資料複写費が当初の心つもりから少々減額となったので、若干の繰り越しがでてしまった。今後の研究費の執行予定は、これまで通り資料収集の旅費と、資料複写費、および図書の購入が中心となるが、このほかに文献目録の作成の入力事務などに人件費を充当するつもりである。
|