研究課題/領域番号 |
23520821
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
中川 恵子(末永恵子) 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (10315658)
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キーワード | 台湾総督府 / 海南島 / 中国華南 / 植民地医学 / マラリア / 日中戦争 |
研究概要 |
本研究の目的は、台湾総督府管轄下の医療団体「博愛会」を通による中国華南への医療支援の実態を分析することによって、日本の植民地医学の中国への進出とその展開を明らかにすることにある。 昨年に引き続き本年度は、台湾の医学や台湾統治、台湾の華南政策に関する先行研究の読み込みを行った。 先行研究もあきらかにしているように、台湾における医学の大きな課題は、マラリア対策であった。近年このマラリア流行を「開発原病」ととらえる見方が有力である。当初、台湾総督府はマラリア対策に力を注いだ結果、台湾のマラリアでの死亡率は徐々に低下してゆくが、1930年代以降、台湾南部ではマラリア流行が再び激しくなったところがあった。これは、米穀増産事業のため大規模な水利システム開発が生まれたことによると考えられている。水利システム開発がなされた結果、マラリアを媒介する蚊の繁殖に好条件の環境が生まれたのである。 このような、環境史・生態学的アプローチの研究成果を参考に華南地方の医学へのアプローチも考察できるのではないかと思い、軍医による報告書、統計を収集・解読しているところである。 博愛会が、最初に派遣された海南島でもマラリアが猖獗をきわめていたことを明らかにした。博愛会によるマラリア対策についても、環境史・生態学的アプローチの研究を参考にしながら進めてゆきたいと思う。 本研究の分野に関係する書籍として、神谷昭典著『植民地医育論-台湾、朝鮮、“満蒙地域”を中心として』が刊行されたが、この書評を書かせていただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
台湾での現地調査が行えなかった点で、予定より遅れている。研究段階としては、史料収集と読み込みを行っているが、具体的な分析に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
史料の読み込みを進めたい。史料から何が言えるのか熟考する時間をとる必要があることを痛感している。
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次年度の研究費の使用計画 |
台湾の現地調査、および国内における史料調査を行うべく、研究費は旅費として使うとともに、資料の購入にも有効に利用したい。
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