本研究は、台湾総督府が財団法人博愛会を通して行った、中国華南地域への医療支援の実態を明らかにすることを目的とした。 1918年から1923年までに台湾総督府は、対岸の厦門、福州、広東、汕頭の都市に、日本人、台湾籍民そして中国人を対象とした博愛会医院を設立した。これは総督府による外交戦略でもあった。第一にその医院の経営について、日本人、台湾籍民、中国人の患者比率や医療費を免除された患者の割合などをさぐった。さらに、日中戦争が華南にも及ぶと博愛会は、防疫や現地民への宣撫など、軍への協力を惜しまず、仏印にも診療所を開設するに至る。戦争における博愛会の変容の実態を明らかにした。
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