研究課題/領域番号 |
23520824
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研究機関 | 名桜大学 |
研究代表者 |
中村 誠司 名桜大学, 国際学部, 教授 (30279426)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 沖縄 / 北部・山原地域 / 字文書 / 地域史 / 市町村史 / 字誌 / 研究方法論 |
研究概要 |
地域文書資料の伝存がきわめて少ない沖縄において、字(行政区)レベルの文書は"沖縄地域史研究"にとって重要な史料価値を有する。字文書は、字の自治・行政に関する多岐にわたる記録文書で、帰属する市町村役所との受発文書を多く含む。 沖縄の地域史研究は、日本の地方史研究において特異な位置を占めつつ、1972年の日本復帰後たいへん活性化してきた。さらに沖縄に特徴的な"字誌"(最小単位の地域史誌)調査研究が盛んで、沖縄の地域史の理解を精確かつ豊かにしてきた。 字誌においては住民の経験的知識・情報に依拠することが多い。それ自体"ローカルな知"の集成としてきわめて重要な記録価値を有するが、地域固有の伝存文書資料をさらに活用することで、字誌の内容を精確・豊富にしていく可能性と課題があると思われる。 しかし、字文書の作成・伝存状況についてはこれまでほとんど注目されず、把握されていない。本研究は、沖縄における字文書資料の伝存状況を沖縄県北部地域(12市町村・188字)において、その概要を把握し、字誌・市町村史への活用を方法論的・事例的に試みることを目的とする。 初年度は、伝存状況調査の把握に先行して、字文書資料の実体を理解するため、資料を閲覧利用可能な大宜味村饒波と今帰仁村兼次について、文書資料の調査と整理作業に着手した。それによって、字文書資料の内容と構成・特徴を実感的に理解でき、今後の研究の難度と道筋が見えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、国頭村奥での調査経験から、字文書資料の伝存・保存状況については、アンケート郵送調査で簡易に把握できると考えた。しかし、字文書資料はその字(行政区)固有の財産であり、原則"外部の者"には閲覧・調査させない。研究意義を字レベル(区長・有志)で了解していただき、信頼関係をつくる必要がある。それには、(1)当方で、深く字文書の実体理解を進め、説明資料を作成すること、(2)当該市町村(とくに市町村史編集事務局)の理解と支援条件をつくること、が準備的に必要であると考えた。 それで、字文書資料の実体を理解するために、現在閲覧利用可能な大宜味村饒波と今帰仁村兼次の字文書資料について、資料調査と整理(資料カード作成)を進めた。市町村史編集事務局とは、編さん委員を務める関係から、名護市史編さん室と大宜味村史編纂室と緊密な関係を作っている。 実際に字文書を精査し整理してみると、当初想定した以上に難しい作業課題であることが分かった。また、その史料価値も具体的に理解できた。この種の資料調査・整理は一回性であり、この機会に精確に文書資料情報を採らなくてはならない。上記2字は特別に文書資料の伝存量が多い字ではないが、それでも1件単位で数えると1,000件をはるかに超える量である。初年度の資料実体理解作業をふまえて、資料整理体制(補助員の能力等)と方法(整理対象字の選定等)を再考する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、当初次の調査研究過程を設定した。(1)字文書資料の所在確認→(2)現地調査(資料撮影複写)→(3)文書資料情報目録作成(資料カード~DB作成)→(4)資料複製作成→(5)解読→(6)翻字→(7)分析→(8)資料化→(9)活用方法論の確立→(10)字誌等への応用。 前年度は、機会を得て、前記2字について原文書資料を閲覧利用でき、過程の(1)(2)(3)(4)に取り組むことができた。また、前年度の調査研究作業から、戦後~日本復帰以前の文書資料の価値がより重要であることが分かった。また、「公文綴」等"簿冊"形態の文書資料の重要性も評価できた。さらに、字総会等の「議事録」記録資料の重要度も理解できた。 これらを中心に、平成24年度は課題の「北部地域全字」について、郵送アンケート法による伝存状況把握調査を前半期に実施する。併行して、市町村史編集事務局からの情報に基づき、いくつかの字について訪問調査を実施し、やや詳しく伝存・保存状況を取材・確認調査を行う。 また、字誌における「字文書資料の利用状況」を把握するため、北部地域の既刊字誌約90点について確認調査を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
まず、持ち越した「北部地域全字伝存概況調査」を実施し、そのデータ整理・分析を実施する。一方、字文書資料の実体を確実に把握するために、前年度着手した、今帰仁村兼次と大宜味村饒波について資料整理作業を進め、この2字については試行的に調査研究過程(5)(6)(7)(8)に取り組む。また、現地調査が容易でない離島地域について調査を実施する。 研究費の使用は、資料整理(人件費)を中心に、有能な整理補助スタッフを確保して執行する計画である。
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