詳細調査対象字の今帰仁村兼次については、1957~77年の「公文綴・発送文綴=簿冊」文書の資料化(資料カード+一覧DB作成)を終え、計1885件の文書を12冊のファイルに仕上げた。これにより、この間の文書情報を一定の内容で総覧することができる。基礎資料として、「兼次住民登録実態調査(1972年10月12日)」「兼次における電化生活用品の普及状況(1972年5月)」などを翻字・整理した。 北部地域全字調査は、「公文簿冊」「議事録」を中心に郵送確認調査を実施したが、回収率は1割弱で不発に終わった。簡単に構えたのがいけなかった。北部地域全体は把握できないが、比較検討資料として、国頭村奥、大宜味村饒波、名護市旭川が有効であり、同様の資料化と比較検討を将来取り組みたい。 戦後字文書は、地域史料が極めて乏しい沖縄・北部地域において、すぐれてローカルな情報であるが、行政調査は市町村~県に共通するもので、聞書きと合わせるなら戦後地域社会生活史を実感的に理解できる。字誌・市町村史での活用は未開拓の課題だが、取り組まれてよい。ただ、本調査研究で経験したように、字文書資料の整理は膨大な作業量を要する。本研究成果・データが、その作業の目安として活用できるようにしたい。 兼次の字誌づくりは、予定する先輩方が高齢なことと、字内での事業化が困難なため、直近に着手できないが、筆者は本調査研究をふまえて、“兼次誌編集スタッフ”として資料を整理・提供しつつ“聞書き”記録作業に進む計画である。
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