研究課題/領域番号 |
23520825
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
菊池 慶子 (柳谷 慶子) 東北学院大学, 文学部, 教授 (00258782)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 奥女中 / 表と奥 / 武家の子女教育 / 奥向の職制 / 奥女中の昇進 / 女中誓詞 / 奥女中を始祖とする武家 |
研究概要 |
本研究は、近世武家政治における女性の役割を明らかにするために大名当主夫人の政治的立場や奥向の職制・職務を検証してきた従来の研究視点に加えて、奥女中となる女性たちのライフコースの全体に目を向け、その身分出自と採用・昇進の経過、隠居後の生活と跡目の擁立、これに連動する表の家臣の取立てなどを実態的に追跡することを課題とした。これまで奥向関係史料が主に江戸から西の諸藩で調査が先行し検討が積み上げられていた研究史も踏まえて、東北諸藩の関係史料の調査・探索と分析をおこなうことも意図して取り組むものとした. 上記の目的に従い、23年度は文献収集と史料調査を秋田藩佐竹家について秋田県立公文書館、弘前藩津軽家について弘前市立図書館、八戸藩南部家文書について八戸市立図書館でおこない、収集史料の一部について解読した。そのなかで、(1)秋田藩・八戸藩の奥女中組織の概要をとらえたこと、(2)奥女中のうち藩主付は参勤交代に同行していること、(3)乳母の採用に困難をきたしひろく領内から身分を超えて集められる実態があること、などがわかったのが当年度の成果である。 なお、当年度の研究成果の一部を以下のように発表した。(1)『江戸時代の老いと看取り』(山川出版社 2011年10月刊行)江戸城大奥、鳥取藩を中心に奥女中の老年での昇進、老後の暮らしをとりあげ、検討を加えた。(2)「歴史の中の女性と政治」(仙台市男女共同参画講座講演 10月22日エルソーラ仙台で開催)戦国期から幕末における女性と政治との関わりを仙台藩伊達家を中心にとりあげ、考察を加えた。(2)3月24日総合女性史研究会2011年度大会報告「震災とジェンダー―安政2年江戸大地震を中心に―」安政2年江戸大地震で江戸藩邸の奥向で被害が大きかったこととりあげ、奥向きの建築構造と女性たちの居所に要因があることを突き詰め、検証をおこない、また武家女性の退避行動に検討を加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)関係図書の購入、関係論文の複写による収集については、近年の武家研究、武家の奥向研究、藩政史研究に関する調査をおこないながら、ほぼ順調に終えた。ただし武家系図の研究、表家臣の相続に関する研究書の調査は未着手であり、次年度の予算で取り組むことになる。 (2)奥向関係史料の調査と写真撮影・コピー等による史料収集、およびその整理作業については、秋田県立図書館佐竹文庫(秋田市)、能代市史編纂室所蔵史料(能代市)、弘前市立図書館津軽家文書(弘前市)、八戸市立図書館南部家文書(八戸市)について、ほぼ予定通りの調査を終えた。津軽家文書の江戸藩邸分は国立史料館にあり、鳥取藩史料の調査と合わせて、次年度以降の調査収集として延期する。秋田藩・弘前藩・八戸藩の奥向の職制に関しては研究が皆無に等しく、史料収集の過程で組織を把握できたことは大きな成果である。奥女中が参勤交代に合わせて江戸藩邸と国元を往来している事実も従来、指摘されていないことであり、大名当主付きの奥女中の一部は側室を含めて藩邸と国元の兼務であることがわかったことは重要である。(3)収集史料が多いため翻刻作業は未着手であり、次年度はアルバイト代を支出して翻刻作業を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は前年度に引き続き、武家女性のライフコースおよび奥向きに関する文献の収集と活字史料図書の購入、東北諸藩の武家女性および奥向関係史料の調査と写真撮影・コピー等による史料収集、およびその整理作業を実施し、その成果に基づき当初計画の視点で史料分析を進める。 調査地域は、前年度の補足調査として八戸藩南部家文書について八戸市立図書館に出向き、あらたに米沢藩上杉家文書等について米沢市立図書館および米沢市上杉博物館、盛岡藩南部家文書等について岩手県立図書館、仙台藩伊達家等について仙台市立博物館および宮城県図書館で調査をおこなう。 奥女中の組織構造が未解明である藩については、その概要をとらえる史料分析をおこない、次いで採用・昇進の実態、および隠退後の家創設の事例を集め分析を進める。奥女中となった女性たちの出自および採用のされかたを探れる史料にたどりつけるかどうかが勝負となるが、奥向で作成された文書だけでなく、個々の武家の日記、藩の分限帳・家譜に集中的にあたることで事例を見いだしたい。また武家女性の個人史を追える文献・史料の探索にもとりかかる。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究計画に従い、物品費として関係図書の購入(予算42万円)、および旅費として古文書の調査と収集のための出張(予算15万円)に研究費用の大半を使用する。 古文書調査と収集のための出張旅費は、前年度の補足調査のため八戸市立図書館、あらたに米沢市立図書館および米沢市上杉博物館、岩手県立図書館、仙台市立博物館および宮城県図書館などへの出張で支出する。 史料はデジタルカメラで撮影し、撮影済みの画像データをトリミングやナンバリング、プリントによる整理、目録作成などの作業をおこなうが、これに使用するインク、文具、整理ボックスなどを購入する。また収集文献の複写をおこなう。これらをその他経費(予算5万円)で支出する。 撮影した古文書を翻刻するためのアルバイト、およびデータ整理作業のためのアルバイト代を人件費(予算8万円)として支出する。
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