研究課題/領域番号 |
23520828
|
研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
岩田 みゆき 青山学院大学, 文学部, 教授 (40365010)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
キーワード | 風説留 / 情報 / 豪農 / 幕末維新 |
研究概要 |
本研究は、幕末維新期に全国的に開花した、在地社会における政治・経済・文化・対外情報の集積である「風説留」及びそれに類する情報記録の所在調査を実施し、さらに収集された情報を史料学的に検討し、情報の内容・量・収集の速度・情報ルート・情報収集の主体・目的・人間関係・地域性などを明らかにすることによって、身分制の枠を超えた幕末維新期の在地社会における情報伝達・情報収集の実態と特色を明らかにすることを目的とする。この目的を達成するため、I在地社会に残された風説留類の所在調査及び所在目録の作成II豪農の風説留類の翻刻と内容の検討III複数の家の風説留類の比較研究という三つの課題を設定した。本年度は、課題IIを重点的に進め、下総国結城郡菅谷村大久保家が収集した風説留の筆耕と内容の検討を開始した。課題Iについては埼玉県立文書館発行の文書目録の中から、風説留類のピックアップ作業を開始した。課題IIIについては、課題IIの進行に合せて色川三中の情報記録『草乃片葉』との比較検討を開始した。その他、既に刊行されている『藤岡屋日記』のほか、江戸の書籍商の情報記録や、瓦版や錦絵などを集めたマイクロフィルムを購入し、これらとの比較検討の準備を整えた。以上を通じて、幕末維新期における在地社会の情報収集・情報判断・情報伝達能力の実態を明らかにし、さらには地域性・家の特性にもとづく特徴なども検討し、幕末維新期の情報社会の実態をより具体的に明らかにしていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、三つの課題のうち第IIの豪農大久保家の風説留の検討を重点的に行った。風説留類の内容の検討をするにあたり筆耕を開始し三割程度終了した。第Iについては、埼玉県内の文書目録から風説留に類する史料をピックアップしデータベース化の準備を始めた。第IIIの課題については、すでに色川三中の黒船情報集を収集しており、比較検討が開始できる状況にある。そのほか風説留類の収集も開始し、史料収集を順調に進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降も課題IIIIIIに取り組んでいく。当初の計画どおり、この中で課題IIについては平成24年度である程度の目途をつけていきたい。したがって平成24年度も、平成23年度と同様に第IIの豪農大久保家の風説留の筆耕と内容の検討を重点的に進めていく。併せて大久保家とかかわりの深い豪農や国学者色川三中が収集した風説留との比較検討も進めていく。課題Iについては、平成23年度は埼玉県を中心に調査したが、平成24年度は茨城県、千葉県、平成25年度は神奈川県、平成26年度は静岡県というように関東近県に残る風説留類の所在調査を実施する。課題IIIについては、課題I・IIの進行状況に合わせて進めていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度も課題IIの豪農大久保家に残された風説留類の内容の検討、筆耕作業を優先的に進めていく。課題Iでは大久保家とかかわりの深い茨城県を中心に所在調査を実施する。課題I・IIの進行状況に合わせて、課題IIIを進めていく。これらの作業を進めるにあたり、必要となるのは、課題Iでは調査費用として交通費と複写費、収集したデータを入力するアルバイトの人件費、課題IIでは筆耕した史料を入力する人件費、課題IIIでは文献史料の購入および複写代などの収集費用、撮影に必要なカメラ周辺機材、マイクロフィルムで収集した史料の印刷にかかる用紙・プリンタートナーなどの消耗品や、印刷したものの製本費用などがかかる。
|