研究課題/領域番号 |
23520828
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
岩田 みゆき 青山学院大学, 文学部, 教授 (40365010)
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キーワード | 風説留 / 情報 / 幕末維新 / 豪農 |
研究概要 |
本研究は、幕末維新期に全国的に開花した、在地社会における政治・経済・文化・対外情報の集積である「風説留」及びそれに類する情報記録の所在調査を実施し、さらに収集された情報を史料学的に検討し、情報の内容・量・収集の速度・情報ルート・情報収集の主体・目的・人間関係・地域性などを明らかにすることによって、身分制の枠を超えた幕末維新期の在地社会における情報伝達・情報収集の実態と特色を明らかにすることを目的とする。この目的を達成するため、I在地社会に残された風説留類の所在調査及び所在目録の作成II豪農の風説留類の翻刻と内容の検討III複数の家の風説留類の比較研究という三つの課題を設定した。本年度は、昨年度に引き続き課題IIを重点的に進め、下総国結城郡菅谷村大久保家が収集した風説留の筆耕と内容の検討を行った。課題IIIについては、課題IIの進行に合せて色川三中の情報記録『草乃片葉』との比較検討を開始した。その他、既に刊行されている『藤岡屋日記』のほか、江戸の書籍商の情報記録や、瓦版や錦絵などを集めたマイクロフィルムを購入し、これらとの比較検討を開始した。これらの研究成果の一部として、「大久保家の蝦夷地情報についてー近江商人とのかかわりを中心に」(『青山史学』31号)を発表した。引き続き、幕末維新期における在地社会の情報収集・情報判断・情報伝達能力の実態を明らかにし、さらには地域性・家の特性にもとづく特徴なども検討し、幕末維新期の情報社会の実態をより具体的に明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度も昨年度に引き続き、課題IIの風説留の翻刻と、内容の検討を重点的に行った。翻刻作業は今年度は三冊終了した。また、翻刻する中から研究成果も出つつある。しかし、当初の予定では、課題IIについては今年度で大半を終了する予定であったが予定より遅れている。理由は、風説留に記載されている情報の一点ごとの検討に予想より時間がかかるためである。次年度において筆耕・分析ともども挽回し、課題I・II・IIIを合わせてすすめていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度にひきつづき、課題I・II・IIIを進めていくが、当面課題IIが必須なので、こちらを重点的に実施していく。遅れている部分は研究協力者などをお願いして能率をあげていく。IIIについては、継続して史料収集を行い、比較検討を継続して行っていく。Iについても埼玉・茨城など関連地域のものを中心に進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
課題Iについては、コピー代、調査のための交通費が必要となる。課題IIのうち筆耕については能率を上げるため外部研究協力者に部分的に委託する。課題IIIについては、継続して比較検討のための関連史資料の収集・購入を行う。
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