研究課題/領域番号 |
23520831
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
松尾 正人 中央大学, 文学部, 教授 (00157265)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2017-03-31
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キーワード | 毛利元徳 / 毛利敬親 / 廃藩置県 / 山口県文書館 / 忠正公伝 / 忠愛公伝 / 徳山藩 / 岩国藩 |
研究実績の概要 |
平成27(2015)年度までは、主に山口県文書館の諸資料を調査し、旧長州藩士族と毛利家の動向について、『山口県文書館史料目録』を活用して、毛利家文書の写真撮影等を重ねてきた。本年度は、それらを原稿用紙に筆写し、史料リストと史料集の作成に向けた作業に着手する。御家流のくずし字であることから、パソコンに打ち込む作業も、一般のアルバイト等に期待できないのが課題で、勤務の間を利用して、資料目録、史料集の作成に取り組む予定である。また、筆写作業については、主に夏期の休日等を利用して山口等へ出張し、万全を期して行きたい。 廃藩置県とその後の動向ついての研究では、第一には、長州藩の最後の藩主であった毛利元徳の明治4年7月の廃藩置県前後の動向、そして廃藩置県後の旧山口藩の山口県への転換、毛利家の東京移転、および旧家臣団の対応を追究してきた。元徳の伝記的研究は皆無で、当面は元徳の父敬親の『忠正公勤王事蹟』を活用することで、この廃藩置県前後の動向を検討する。山口県文書館には、毛利敬親・元徳関係の伝記稿本類が残されており、その膨大な記録を調査・検証することで、毛利元徳に関する幕末維新の解明が可能である。山口県文書館の「忠正公伝」「忠愛公伝」については、これまでも調査・筆写等を進めて来たが、引き続いてその筆写・分析を行うとともに、同館の「両公伝編年史料」を用いて、基礎的な史料段階から検討をすすめ、一層の史料把握・分析を重ねたい。昨年度は山口県史編さん室を訪問し、同室に収蔵されている県史関係史料を閲覧し、その一部の筆写、複写を行った。山口県文書館等で入手できない史料等も存在し、今後もその活用を企図している。なお、昨年度は長州藩の支藩である徳山、長府、岩国等を調査し、所在史料の概要、把握をすすめた。特に岩国の吉川家文書は、保存・整理が着実で、史料集等の活用も可能となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで山口県文書館の「毛利家文庫目録」(1)~(5)を利用し、同目録中の毛利敬親、毛利元徳関係史料の調査を重ねてきた。幕末の藩主であった毛利敬親の忠正公関係史料からは当該期の長州藩の動向が、敬親の後継となった毛利元徳の忠愛公関係史料からは、廃藩置県とその後の長州藩の動きを明らかにすることができ、幕末長州藩研究に新たな視点が提起できたように思う。 また、この「毛利家文庫目録」は、雲上、柳営、公統、政理など、多岐にわたる項目で膨大な毛利家文書が分類されており、歴史史料の貴重な集積となっている。幕末政治史や戊辰戦争関係の史料も多く、その丹念な分析は、長州藩の幕末維新関係新研究となることが期待できる。吉川家や小早川家などの分家等の史料、幕末・維新の関係史料からは、諸隊一件などの混乱が明らかとなり、忠正公・忠愛公両公の記録も長州藩の幕末維新の動向を解明できる貴重な史料である。昨年度は、岩国、長府、徳山等の長州藩の支藩に関する史料調査を実施しており、それらが新たな研究の大きな前進となっている。
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今後の研究の推進方策 |
毛利敬親(忠正公)と毛利元徳(忠愛公)の大部な史料は、幕末維新期の長州藩の活躍を正史として体系化した書籍である。幕末期の困難な政情、幕府側との対決、新政府樹立後の同藩の苦心、版籍奉還や廃藩置県と同藩の関係などが列記されている。木戸孝允や伊藤博文・井上馨などの長州藩関係者、藩側の有力者および公的な動向が丹念に記されている。一方、毛利家文庫目録には、毛利家とその家臣や関係者の記録が整理され、目録化されている。長州藩の制度、儀礼、法令、諸伺、財政、軍事、用度、産業など、長州藩の諸制度と格式・儀礼等が明らかになる。今後は、これらの長州藩毛利家の体系が、戊辰戦争、版籍奉還、廃藩置県を通じていかなる転換が行われ、明治期に継承されたのか、明治期の侯爵毛利家につながる動向を追求したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査計画は予定通りであったが、交通費等で計画の達成にいたらなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の山口県文書館への調査費へ繰り越す予定である。
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