研究課題/領域番号 |
23520832
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
白川部 達夫 東洋大学, 文学部, 教授 (40062872)
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キーワード | 肥料商 / 干鰯 / 〆粕 / 鯡粕 / 地域市場 |
研究概要 |
今年度も大坂干鰯屋仲間の近江屋市兵衛家文書のデータのエクセル化作業を推進した。帳簿については、干鰯買日記、売日記はほぼ打ち込むことができたが、点検に時間がかかって、論文化までには至らなかった。ほかに手形帳なども若干データ化を開始した。 論文については、近江屋市兵衛の本家であった同じ干鰯屋仲間の近江屋長兵衛家文書が大阪市史編集所の協力で入手できたので、今年は近江屋市兵衛家文書の分析の前提として、本家の近江屋長兵衛家文書の分析を行い論文として発表した。近江屋長兵衛家は、寛政初年に干鰯屋商売を始めたと考えられ、大坂干鰯屋仲間の内、問屋組(古組)に属した。近江屋長兵衛文書は、帳簿類が全くなく、状物だけであるため、その経営の全貌はつかめないが、同家が年行司を勤めた文政9年前後には、問屋組では振り手形を利用した売買が行われており、その決済構造をもつことで、市場を独占する効果があったこと。また安政年間の大坂への魚肥の入荷量が判明したこと。さらに近江屋長兵衛の在村への肥料販売の様相を預り銀証文から明らかにした。いっぽう文書を点検したところ、近江屋市兵衛家が天保期に当主が死亡したため、幼年の姉弟が近江屋長兵衛家に引き取られて、安政2年に再興されたことがわかった。近江屋市兵衛家の帳面が天保後半より安政2年まで欠けていた理由がこのためであることがわかった。 調査は、主として大坂八尾市歴史民俗資料館での撮影、岸和田市教育委員会での撮影のほか堺市、和泉市など泉南地域の調査を重点的に行った。八尾市以外は、史料は断片的なものであったが、それでも丁寧に通い帳などを拾い上げて、比較していけば、何らかの傾向を読み取ることもできるので、次年度も調査を続行するつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目標の大坂干鰯屋仲間・近江屋市兵衛家文書のエクセルへでのデータ化は、第一段階をほぼ順調に終了している。販売帳簿である干鰯売日記は、文政11年、同12年、天保3年、天保5年、安政4年、同6年、同7年が前年度データ化できたが、これにつづいて、今年度は天保9年、天保11年、安政7年、慶応3年、明治4年、明治5年、明治6年、明治10年分がデータ化を完了した。また昨年は手つかずだった仕入れ記録である干鰯買日記は文政12年、天保2年、安政6年が完成した。なお買日記では文久2年、慶応3年、明治5年が残っている。その他関連史料もあるので、今年度完了したい。またデータ化はアルバイトレベルのものなので、今後、これを校正して、計算可能な状態に編集しなければならない。その作業は着手できなかった。 近江屋市兵衛家の作業事情が以上のものなので、今年はその本家・近江屋長兵衛家文書を分析して、論文を作成した。近江屋市兵衛家文書が帳簿ばかりなのにたいし、近江屋長兵衛家文書は状物だけで経営の全体像はわからないが、帳簿からわからない、取り引き実態がわかるので、近江屋市兵衛家文書分析の前提として検討した。これにより大坂干鰯屋仲間の取り引き実態が明らかになった。 調査では、大阪周辺の調査を進め、前年度探し出した八尾市立歴史民俗資料館・岸和田市教育委員会の文書撮影を一応完了した。外に和泉市、堺市などの今年度は、泉南地区を中心に調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究の目的は近世後期の肥料商と地域市場の変動を明らかにすることにある。その大きな柱として、大坂干鰯屋近江屋市兵衛の経営文書を分析して、近世後期の先進地域の肥料商と地域市場の動向に迫ることがあげられる。そのため近江屋市兵衛家文書のエクセルでのデータ化を進めてきた。次年度は最終年度なので、このデータの校正、分析を行い論文を作成する。今年度行った本家近江屋長兵衛家文書の分析の結果、近江屋市兵衛家は天保末年に当主が亡くなり、安政2年まで商売が中断したことがわかった。帳簿が欠けていたのはそのためであった。そこでとりあえず天保末年までで区切って論文化することを考えている。また大阪泉南地方を中心に調査を行い史料の確保に努める。本研究のネックは史料が失われていて、状況がわからないことにあるので、関東に限らず、肥料商の史料のある情報が得られれば調査を行いたい。またデータのエクセル化は、余裕があれば徳島県三木文庫史料や兵庫県相生市の浜本家文書などでも行い、後日の分析に備えたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度予算が180千円繰り越しとなったが、3月中に行った大阪調査の旅費等が期日の関係で計上できなかったのと、委託費で史料のエクセル化を発注したものの完成が遅れて執行できなかったためである。大阪出張はすでに終了しており、委託費分については督促して完成後予算処理することにする。 平成25年度予算は、これを含んだ計画である。本研究での目標は、大坂干鰯屋仲間近江屋市兵衛家文書の分析であるので、エクセルでデータ化しする作業の完成が最大の課題である。当然主要部分がここに投じられる。人件費でータ化作業について350千円、その他史料整理人件費100千円を計上する。これは最終年度の予算計画通りである。人件費は総額ベースで、若干超過する見込みだが、研究の基礎を固めるものなので、重視したい。また調査は、泉南地方を中心に大阪周辺において実施する。現状では、富田林市に有力な所蔵家があるので、交渉している。研究のネックは史料の不足にあるので、全国で肥料商の情報のあるところには調査を行っておきたい。そのため旅費を200千円とした。これも総額ベースで若干超過するが、史料の確保は最優先事項なのでとくに配分した。物品費は、昨年から節約していたが、ウインドス8が発売されたのと軽量ノート型パソコンが出たので、調査の効率化のため購入することにして230千円を予算として組んだ。 また史料のデジタル媒体での購入費として100千円を見積もった。
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