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2012 年度 実施状況報告書

近世における征韓論の系譜を探る

研究課題

研究課題/領域番号 23520835
研究機関明治大学

研究代表者

須田 努  明治大学, 公私立大学の部局等, 教授 (70468841)

キーワード日本史 / 思想史 / 民衆史 / 植民地論
研究概要

本研究の目的は,近代日本の朝鮮侵略と朝鮮植民地化への原初となった征韓論の系譜を近世社会にさかのぼり考察することにある。具体的なアプローチは以下である。
①江戸時代民衆の朝鮮・朝鮮人観の解明につき,浄瑠璃・歌舞伎作品をメディアとして位置づけ分析する。
②征韓論の原点とされる吉田松陰,及び対馬藩の朝鮮観を分析する。
このうち①に関して,史料調査・分析はすべて終了し,成果を発表する段階となった。2012年度,以下の論文がその成果となる。「通信使外交の虚実」(趙景達編『近代日朝関係史』有志舎、2012年,pp.29~63)。「明治維新と征韓論の形成」(趙景達編『近代日朝関係史』有志舎、2012年、pp.64~92)。また,成均館大学校(韓国)国際シンポジウム「成均館大学校東洋史学術院HK財団2012年度企画学術会議」において,「朝鮮侵攻論の深淵――近世の朝鮮・朝鮮人認識――」を発表し,第12回 日韓文化交流基金主催,日韓歴史家会議において、「中国化の限界から脱中国化へ向かう日本の近世――民衆の自他認識――」という報告を行った。
②の成果では,吉田松陰に関する史料調査を実行し,また韓国釜山・蔚山において,豊臣秀吉の朝鮮侵略の際に築城された倭城の巡見踏査を行い,韓国の研究者から情報を得ることができた。また,吉田松陰の思想と行動の特質を解明するために,同時代の儒学者であり,開国貿易論を展開した横井小楠との比較を行った。これらの成果は「横井小楠と吉田松陰」(趙景達他編『東アジアの知識人』有志舎)として刊行予定である(入稿済み)。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2012年度までにおいて,当初の研究計画のうち,①江戸時代民衆の朝鮮・朝鮮人観の解明につき,浄瑠璃・歌舞伎作品をメディアとして位置づけ分析する,に関しては,当初の計画以上の成果を得られ,研究はすべて終了し,研究成果を論文発表することができた。
②征韓論の原点とされる吉田松陰,及び対馬藩の朝鮮観を分析する,のうち,吉田松陰の朝鮮侵攻論の特質に関する研究に関しては,韓国での巡見踏査をふまえ実行でき,この成果の論文発表も行った。
ここまでは,当初の計画予定以上の進展であるが,対馬藩の朝鮮観に関する分析・研究が遅れている。この理由については以下である。
研究途上において,上記①に関して,海外も含め,研究報告や論文執筆のオファーがあったため,その準備に時間を取られた。上記②のうち,対馬藩の朝鮮観の分析には,その前提として,吉田松陰の思想・行動を解明し,彼の弟子(木戸孝允・久坂玄瑞・高杉晋作ら)の政治行動の分析が必要であることが分かり,研究時間を優先的に吉田松陰および、彼の弟子の政治行動分析に当てたためである。

今後の研究の推進方策

研究はおおむね順調に進展している。①江戸時代民衆の朝鮮・朝鮮人観の解明につき,浄瑠璃・歌舞伎作品をメディアとして位置づけ分析する,に関しては,研究は終了した。
2013年度(最終年度)においては,②征韓論の原点とされる吉田松陰,及び対馬藩の朝鮮観を分析する,を実行する。吉田松陰論に関しては,分析はほぼ終了し,研究報告・論文発表を行っていく予定である。2012年度に引き続き,韓国での成果報告(研究報告)も予定している。これは、当初の計画通りである。
2013年度は,遅れている対馬藩の朝鮮観に関する分析が中心となる。対馬でのフィールドワーク・史料調査を実行する予定である。また,当初の計画を超えるものであるが,対馬藩の特質を理解するために,比較対象として薩摩藩の朝鮮観をも分析してみたいと考えている。鹿児島でのフィールドワーク・史料調査を実行したい。具体的には,秀吉の朝鮮侵略で強制連行された朝鮮人陶工の村(苗代川)を分析対象とする。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (6件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] 「江戸時代庶民の対外認識」2012

    • 著者名/発表者名
      須田努
    • 雑誌名

      『歴史地理教育』

      巻: 791 ページ: 72~77

  • [学会発表] 「18世紀 近松門左衛門が語る因果」

    • 著者名/発表者名
      須田努
    • 学会等名
      藝能史研究会
    • 発表場所
      京都市 同志社大学
  • [学会発表] 「「戦後歴史学」で語られた民衆イメージを止揚する」

    • 著者名/発表者名
      須田努
    • 学会等名
      成均館大学 国際シンポジウム 「19世紀、東アジアにおける民衆主体と社会変容」
    • 発表場所
      ソウル特別市 成均館大学校
  • [学会発表] 「朝鮮侵攻論の深淵――近世の朝鮮・朝鮮人認識――」

    • 著者名/発表者名
      須田努
    • 学会等名
      成均館大学校東洋史学術院HK財団2012年度企画学術会議(国際シンポジウム)
    • 発表場所
      ソウル特別市 成均館大学校
  • [学会発表] 「中国化の限界から脱中国化へ向かう日本の近世――民衆の自他認識――」

    • 著者名/発表者名
      須田努
    • 学会等名
      日韓文化交流基金 日韓歴史家会議
    • 発表場所
      東京都
  • [学会発表] 「イコンの崩壊から」

    • 著者名/発表者名
      須田努
    • 学会等名
      歴史学会 第37回大会報告
    • 発表場所
      東京都 成蹊大学
  • [学会発表] 「日本の史学史における民衆史研究」

    • 著者名/発表者名
      須田努
    • 学会等名
      アジア民衆史研究会 歴史問題研究所 合同国際シンポジウム
    • 発表場所
      蔚山市 蔚山大学校
  • [図書] 「諦観の社会文化史」関東近世史研究会編『関東近世史研究論集2』(澤登寛聡・原淳一郎他)2012

    • 著者名/発表者名
      須田努
    • 総ページ数
      363P
    • 出版者
      岩田書院
  • [図書] 情報とコミュニケーションの関係」塚原康博他編『問題解決のコミュニケーション』(塚原康博・鈴木健他)2012

    • 著者名/発表者名
      須田努
    • 総ページ数
      220P
    • 出版者
      白桃書房
  • [図書] 「通信使外交の虚実」趙景達編『近代日朝関係史』(趙景達・須田努他)2012

    • 著者名/発表者名
      須田努
    • 総ページ数
      384P
    • 出版者
      有志舎
  • [図書] 「明治維新と征韓論の形成」趙景達編『近代日朝関係史』(趙景達・須田努他)2012

    • 著者名/発表者名
      須田努
    • 総ページ数
      384P
    • 出版者
      有志舎

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公開日: 2014-07-24  

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