研究課題/領域番号 |
23520836
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
久保 健一郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60257235)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 兵糧 / 兵粮 / 戦争 |
研究概要 |
日本中世史における戦争論・食糧問題論・社会経済史を、兵糧を具体的素材として前進させることを目的とする本研究では、今年度の史料収集から以下の成果を得た。 まず、鎌倉~室町時代においては兵糧に関わる史料があまり多くないことである。もちろん、史料の残存は時代が降れば多くなるから、戦国時代に比して鎌倉~室町時代における兵糧に関わる史料が少ないのはある程度予想できることではあるが、戦争自体は、中世を通じて断続的に起きているのであり、予想をはるかに上回って少なかったといえる。このことからは、戦争において兵糧が確固たる位置づけを得るのが、戦国時代になってからであり、それ以前においては、兵糧が重要物資であったにもかかわらず、しっかりと統御されていないことがうかがわれる。このことは、中世の戦争がどのように変化していったかを知る重要な手がかりになると考える。 また、戦国時代になると、東国では売買における代価や収取における現物そのものを指して「兵粮」と称するような事例がしばしば見られる。すなわち、戦争と関係なしに「兵粮」という文言が売買・収取に関わって登場するのであり、これは東国の地域性によることなのか、さらに次代の石高制につながる問題を含むのかなどの点で興味深い問題であり、社会経済史の点から重要な論点を得たと考える。 さらに、中世を通じて在地の富を、「兵粮」と称して吸収することが、守護などにより行われていることが確認できた。これは戦時における戦費調達を、平時においても定着させようとしているのであり、戦争論の点からも、社会経済史の点からも重要な論点である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、日本中世における兵糧に関わる史料の収集を、博士後期課程の大学院生2名、オーバードクター1名の補助を得て行った。自治体史の資料編からの古文書における収集を主に行い、関東地方についてはほぼ終了し、中国地方・北陸地方・東海地方について進行している。日記史料にも着手したいところではあったが、史料の収集としてはほぼ満足のいく進行と考えている。これは、現在古文書からの収集に着手していない東北・四国・九州は列島の地域全体からいえば、史料の数が必ずしも多くないからである。 収集した史料は、該当部分をコピーしてファイリングし、データベースの作成も博士後期課程の大学院生2名・オーバードクター1名の補助を得て行っており、これらの進行も史料の収集に準じて、ほぼ満足のいくところである。 また、月1回のペースで、史料の収集・整理にあたっている上記3名と、論点を含むと思われる史料についてディスカッションを行っている。ここにおいて得た知見を下敷きにして、「研究実績の概要」で述べたような成果を得ているわけであり、以上の点から総合的に考えて、おおむね順調に進展していると評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度も、今年度に引き続き、日本中世における、兵糧に関わる史料の収集を行う。古文書については、主要な史料集からの収集を終え、日記史料、軍記史料からの収集に着手する。日記・軍記についても膨大な数があるので、主要なものを選別する作業をあらかじめ行う。収集した史料は、整理の上、データベース化を続行する。以上の作業については、今年度と同様に、博士後期課程の大学院生2名・オーバードクター1名の補助を得て行う。 また、上記3名とは、やはり今年度と同様に、論点を含むと思われる史料についてディスカッションを行い、さらに分析をすることによって順次得られた成果も、個別に発表していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初の予定通り、次年度も研究費の多くを占めるのは人件費・謝金である。3名の研究補助を得ての史料収集・整理が中心となるからで、870,000円の支出を計画している。物品費としては、記録メディアや論文抜き刷り、その他としては、複写費や郵送費を想定・計画している。
|