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2011 年度 実施状況報告書

紀の川流域における中世荘園の地域環境史的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520837
研究機関早稲田大学

研究代表者

高木 徳郎  早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (00318734)

研究分担者 海津 一朗  和歌山大学, 教育学部, 教授 (20221864)
藤井 弘章  近畿大学, 文芸学部, 准教授 (00365511)
高須 英樹  和歌山大学, 教育学部, 教授 (90108001)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード荘園の現地調査 / 荘園景観 / 地域環境
研究概要

研究代表者は、6月17日に調査対象地となる和歌山県紀美野町へ赴き、町教育委員会において調査趣旨の説明を行い、同日、和歌山市内において研究分担者とともに調査の具体的なすすめ方について打ち合わせを行った。8月26~27日には、予備調査として、研究分担者の海津一朗氏とともに調査対象地である紀美野町福井地区へと入り、水利灌漑調査として、棚田における灌漑の現況を地形図上に落とし込んでいく作業を開始した。この際には、4人の大学院生を研究協力者として参加させ、上記の作業を地区ごとに分担して進めた。9月22日~24日には、本調査として研究分担者の海津一朗氏・高須英樹氏とともに上記地区に入り、予備調査にて完了しなかった地区について、上記同様の作業を行うとともに、地元の農業者の方からの聞き取り調査や、現地での立ち会い調査を行った。この際にも、8人の大学院生・大学生を研究協力者として参加させ、地区ごとに作業を分担した。なお、研究分担者の藤井弘章氏も、この間、紀美野町域における民俗調査を1回、行った。 その後、東京にて、現地で記入した地形図の清書作業を進めた。清書はGoogle Earthを活用した航空写真上に現況を記入していくパターンと、従来型の地形図(縮尺2500分の1)に記入していくパターンとの2パターンを試みたが、航空写真の場合、地目の変化や土地の造成などの現況をそれなりに反映していて、清書が進めやすい反面、現段階では解像度がそれほど高くなく、調査成果としては公開しにくい面があることが分かった。一方、地形図の場合は、その作成が古く、地目などの現況が反映されていない反面、成果物としての仕上がりがよく、公開に向いているものと思われた。 調査対象地は歴史的に重要な地域である一方、過疎化と耕作放棄が急速に進んでいる地域であり、今回の調査によって灌漑状況が記録できたことは大きな成果であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画では、調査初年度の今年度においては、紀美野町福井地区の灌漑概況を把握し、それを地形図上に再現することを目標としていた。福井地区はさらに細かく、中田・梅本・奥佐々・坂本・東福井・西福井より成るが、奥佐々・坂本を除く地区において、調査作業を終了した。奥佐々・坂本地区については未着手だが、耕作が維持されている水田はきわめて僅少で、わずかな作業量で調査を終了できるものと見込まれる。ただ、ほぼすべての地区で、耕作放棄が昨年よりもさらに進んでいることをふまえるならば、調査はなるべく早く終了しておくことが望ましい。 また、和歌山県立博物館において、2011年10月22日から12月4日までの会期で、今回の調査成果の一部を取り込んだ特別展「中世の村を歩く―紀美野町の歴史と文化―」が開催された。中世神野真国荘が展開した紀美野町域に残る文化財を広く収集・展示し、この地域が持つ歴史的な奥行きの深さを改めて発信する機会となったが、研究代表者は、今回の灌漑調査の成果をふまえて、福井地区に展開する棚田の成立時期を推測する記事を展覧会の図録に執筆し、会期中に行われた講演会では、平安時代末期に制作された「紀伊国神野真国荘絵図」についての新しい解釈について、現地調査の成果をふまえて講演するとともに、同館学芸員の坂本亮太氏(研究協力者)とも意見交換を行った。

今後の研究の推進方策

研究の2年目となる次年度は、まずは調査が終了できなかった地区についての調査を行い、回数的には十分ではなかった民俗調査・植生調査をよりいっそう加速させる。今年度において調査対象とした福井地区は、神野真国荘域の中では西の境界地域にあたり、隣接する石清水八幡宮領野上荘との境相論が絶えない地域であった。神護寺から領有権を継承した高野山においては、新たに縁起を創出するなどして境界の維持を図らねばならなかったが、現行の水利秩序や水利慣行にはそのことが色濃く反映されており、そうした秩序が歴史的に形成されてきたものであることを如実に示すものであった。調査を終了できなかった地区でもその傾向が認められるかどうかが、当面の課題である。 また次年度は、当初の計画にあった通り、今年同様の灌漑調査を、紀美野町内の別の地域において進めるが、その調査対象地を抽出するにあたっては、上記のような境相論や縁起との関係で、今年度の調査成果と比較検討しうるような素材が得られるようにしたい。また、そうした灌漑調査の成果と民俗調査・植生調査の成果を統合し、水田耕作のみに一元化・単純化されない当地域の多様な生業のあり方を復元し、そのことが植生や景観にどのように反映しているのかを明らかにした上で、中世における神野真国荘の生業・生活空間を立体的に再現することをめざしたい。10月には、それぞれの調査成果を持ち寄って中間報告会を開催する予定で、そこにおいて調査成果の統合について、何らかの着地点が見いだせるものと考えている。

次年度の研究費の使用計画

今年度の調査では、調査予定となっていた対象地域すべての調査を終了できなかった。その原因は、調査対象地の地形が複雑かつ、現況で水田耕作が維持されている場所が広域のエリアの中に点在していて、現況の把握にやや手間取ったことが挙げられるが、調査を終了出来なかった地区は、そのわりには少なく、調査はほぼ順調に進行していると言える。従って、今年度使用予定であった研究費の一部を次年度に回し、次年度以降、今年度より多くの研究協力者を確保しつつ、より効率的に研究費の使用を図りたい。さらに、2年目となる次年度は、今年度調査を終了した地域とは別の地域で、今年度同様の調査を進めるため、今年度同様、現地調査にかかる旅費を中心に研究費を使用する。研究代表者・分担者の旅費はもちろん、延べ33~35人程度の大学院生を研究協力者として調査作業に従事させるため、その旅費が必要となる。その他、調査対象地に公共交通機関がないため、レンタカーを借用する借用料や、帰京後の資料整理にかかる謝金などを支出する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2011

すべて 図書 (1件)

  • [図書] 中世の村を歩く―紀美野町の歴史と文化―2011

    • 著者名/発表者名
      高木徳郎(共著)
    • 総ページ数
      202
    • 出版者
      和歌山県立博物館

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公開日: 2013-07-10  

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