研究課題/領域番号 |
23520837
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
高木 徳郎 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 准教授 (00318734)
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研究分担者 |
海津 一朗 和歌山大学, 教育学部, 教授 (20221864)
藤井 弘章 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (00365511)
高須 英樹 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90108001)
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キーワード | 神野・真国荘 / 荘園調査 / 水利灌漑 / 生業 / 棚田 / 溜池灌漑 / 歴史的景観 / 環境史 |
研究概要 |
和歌山県北部の紀の川流域は、日本中世史の概説書等に紹介される著名な荘園が多く点在し、なおかつ伝統的な農村景観や共同体的慣行がよく残存していることから、これまで多くの現地調査が行われてきた地域である。また、当該の地域は著名な荘園絵図によって当時の荘園景観を視覚的に理解できる地域としてもよく知られている。しかし、カセ田荘を除いて、絵図の景観を復元しうるような十分な荘園調査がまだなされておらず、とくに神野・真国荘の故地である和歌山県紀美野町域では、過疎化・高齢化による耕地の耕作放棄が進む現状に鑑みれば、早急にこうした荘園調査が行われる必要があると考えられた。さらにまた、近年、環境問題への社会的関心の高まりの中で、棚田や里山への関心が急速に高まりつつあるが、紀の川流域は「棚田」地名の初見史料がある地域であり、紀美野町の中でも中田・梅本地区および三尾川・赤木地区などは、壮大かつ良好な棚田景観が展開している地域である。 こうした理由から、本研究では、主に農業水利・生業民俗の二つの観点より、神野・真国荘地域の徹底した現地調査を行い、その現況を記録するとともに、荘園が展開した中世における歴史的景観の復元に取り組んだ。調査は、本科研費以外に私費などで行った調査も含めて27回に及び、現状で記録しうる限りの歴史的情報の記録を行い、その成果の一部を『紀伊国神野・真国荘地域総合調査』としてまとめ、印刷・刊行し、地元協力者や関係の公共機関、自治体の関係部局、全国の公共・大学図書館などに送付した。 この調査により、溜池灌漑におけるこの地域独特の時間配水慣行や、中世にまで遡り得る用水路による棚田灌漑の実態、荘園絵図の現地比定とその新たな読解など様々な新知見が得られたことは幸いであった。また、生業面でも、民俗調査により、この地域独特の生業に関わる民俗誌を記述し得た点も大きな収穫として特筆できよう。
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