本研究は「古文書学の再構築―文字列情報と非文字列情報の融合―」と題し、古文書上に書かれ、多くの場合活字化されて歴史学の「史料」として活用されている文字列情報と、和紙としての古文書そのものが本来有する非文字列情報とを融合した、新たなる古文書学を構築するために、古文書学とアーカイブス学(文書保存学)との対話の可能性を探ることを目的とした。 上記の目的を達成するため、最終年度に当たる平成25年度には、7月31日と9月17日に京都府立総合資料館で東寺百合文書の調査を、また12月22~23日には京都で報告書論文集作成に向けた研究会を実施し、26年3月にはこれらの成果を載せた報告書『古文書学の再構築―文字列情報と非文字列情報の融合―』(以下『報告書』と称する)を刊行した。 7月と9月の調査では、京都府立総合資料館所蔵東寺百合文書のうち、足利将軍家発給文書の正文60通を熟覧し、その内、裏打ち等が施されていない11通について、顕微鏡撮影等による料紙分析を行った。その調査結果は『報告書』に高島晶彦「古文書料紙の自然科学的手法による調査・研究―東寺百合文書料紙の検討―」として発表した。 また12月の研究会では、新見康子「東寺所蔵学衆方評定引付の伝来と現状について」、花田卓司「南北朝期における守護・大将発給安堵状」、神野潔「足利尊氏・直義の「祈祷御教書」について」、生駒哲郎「足利尊氏発願一切経の特徴について」、岡野友彦「尊氏を高氏と表記すること・再論」という5つの研究報告を行い、上記の高島論文ならびに漆原徹「相良家文書にみる足利尊氏の「御判紙」について」と併せて、7本の論文を『報告書』に収録することができた。
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