研究課題/領域番号 |
23520843
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
田中 聡 立命館大学, 文学部, 教授 (10368011)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 日本近代史 / 史学史 / 教育史 / データベース |
研究概要 |
初年度は、先の科研(2007~2010年度基盤研究(c))で主に調査の対象とした京都府下の教職員組合所蔵資料等の整理に加え、新たな関連資料の掘り起こしを重点的に行った。調査においては関西の若手・中堅の研究協力者とともに作業を進めた。 京都教職員組合所蔵資料については、なお未調査の資料が多数保管されている京都教育センター資料室の再調査を行い、同教組創立以前(1946年)の資料を発見した。また奥丹後地方教職員組合所蔵資料については、所蔵先の京丹後市史編さん室で2011年9月(1泊2日)・2012年3月(2泊3日)で目録作成・補正作業を進めるとともに、久美浜町で戦前に発掘された函石浜遺跡に関する調査経過の分かる研究文献を収集した。 また、戦後、大谷大学・同志社大学で教鞭をとった三品彰英氏の実家(守山市蓮生寺)から預かった未整理の資料を、大学の個人研究室へと移し、目録作業の続きを行うとともに、その成果の一端を京都歴史研究会にて報告した。さらに、三品の弟子でその死後に日本書紀研究会代表を継いだ横田健一氏(元関西大学教授)の聴き取り調査を行い、戦中・戦後の京都の学問状況等についての知見を得た。 さらに東京都(国会図書館)・愛知県(美濃加茂市民ミュージアム、名古屋市市政資料館等)にて資料の収集を行った。また、立命館大学文学部日本史学専攻共同研究室に、1950年代から40年にわたり学生が企画した市民向け講演会「夏季日本史公開講座」の資料が保管されていることを確認し、次年度の調査計画に加えた。 研究成果の公開に関しては、上記の京都歴史研究会での報告(2011年11月12日)の他、子安宣邦編『日本思想史』(人文書院、2011年8月刊)にて津田左右吉・三品彰英・高取正男等の著作について論じ、また小林丈広氏編の史学史論集に紙芝居「祇園祭」に関する1952年の写真を紹介する一文を寄せている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
京都教職員組合資料・奥丹後教職員組合資料の調査については、新たな研究協力者(大学院前期課程・学部生)との作業により、未調査分の資料の概要確認と、簡易目録しか作成できていなかった分の目録の補完が順調に進んでいる。また、京丹後市史編さん室や立命館大学での調査により、未だ研究対象とされていない貴重な資料を多数発見し、今後の研究対象がさらに広がった。美濃加茂市民ミュージアムで開催された「没後50年 津田左右吉展」にて直筆の厖大な資料群を実見し、名古屋市市政資料館で京都地域との比較検討の材料となる資料を入手出来た。 戦後歴史学の創成期に関わった方の聴き取り調査については、2012年2月に急逝された横田健一氏の生前最後の貴重な回顧談を記録することが出来た。成果公表に関しては、これまで交流がなかった研究会での報告の機会を得、また先の科研報告書や三品彰英資料に関する論文を通じた研究者との情報交換を通じて、研究のネットワークが一層拡大しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の成果を基盤としつつ、教職員組合資料・三品彰英関係資料・立命館大学日本史学専攻共同研究室所蔵資料の調査・目録作業を研究協力者とともに進める。また京都府立総合資料館・山城郷土資料館と協力し、各館所蔵の自治体史編纂過程に関する行政文書・活動記録や『わたしたちの京都』(小学校の副読本)等の地域資料を調査する。府南部地域の郷土史サークル関係者や、これまで充分な調査が行われてこなかった非京大系の日本史学・民俗学研究者等の聴き取りを積極的に行う。 紙芝居「祇園祭」を学生や一般市民の前で再演するとともに、同映画版シナリオ・映像との比較検討を進め、また京都民科歴史部会所蔵の他のスライドフィルムについてもデジタルデータ化し、研究利用の便を図る。これらの成果の一部については研究報告会等の場を設けて一般に公開する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も現地調査の回数が多くなるため、調査費や研究協力者の旅費の割合が大きくなるが、蓄積された写真・音声等のデータを記録するためのHDD、京都地域関連の図書・資料の収集にも4割近くを宛てる予定である。 なお、平成23年度に納入を予定していた調査用機材(カメラ撮影台・ハンディビデオカメラ・ズームレンズ・デジタル顕微鏡等)の納品が遅れ、平成23年度研究費に未使用額が生じたが、次年度に納入されるため、平成24年度の研究計画と併せて実施する。
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