研究課題/領域番号 |
23520843
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
田中 聡 立命館大学, 文学部, 教授 (10368011)
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キーワード | 日本近代史 / 史学史 / 教育史 / データベース / 地域研究 |
研究概要 |
3年目となる本年度は、昨年度の成果を基盤として、教職員組合資料の目録作成を進めつつ、研究協力者とともに新たな資料の発掘・調査を行った。 奥丹後地方教職員組合資料については、京丹後市史編さん室にて2013年8月30・31日、2014年3月25・26日に目録作業を行い、来年度に完成予定である。京都教職員組合所蔵資料の目録作成も継続中である。立命館大学日本史学研究室所蔵資料については、2013年7月11・18・25日、8月1日、10月19日、2014年2月13日・27日、3月10日・17日に目録作成・チェック作業を行った。また新たに元京都市立小学校教師の吉見敏夫氏旧蔵の社会科ラジオ劇台本を多数発掘し、整理を開始した。三品彰英旧蔵資料の現状についての確認作業を2014年3月10日・17日に行った。 京都府京都文化博物館所蔵の映画『祇園祭』関連資料については、2013年5月16日に同館にて行い、また同作品のカメラマン青木完一氏からの聴き取り調査も実施した(2013年4月14日)。これらで得た知見の一端は、立命館土曜講座(2013年6月8日)、日本史研究会例会(2013年6月22日)にて紹介した。さらに関連調査として新たに『京都新聞』紙上の映画上映情報の収集作業を開始し、現在も継続中である。絵具商の老舗・上羽絵惣の資料については、2013年8月5日に整理・目録作成を行い、京都産業大学への移管の目処をつけ、準備を進めた。また東京裁判戦犯であった大塚隆氏旧蔵資料の調査にも参加した。 加えて、他地域の住民の地域に対する歴史意識に関して新知見を得、京都地域との差異について考える材料を得るため、和歌山市(2013年11月9日)、名古屋市(2014年2月2日)、東日本大震災の被災地(2014年3月12~16日)等を研究協力者とともに踏査し、資料の収集や聴き取り調査を行い、現状について記録した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度からの継続課題である京都・奥丹後教職員組合資料・立命館大学日本史学研究室所蔵資料等の目録作成作業は順調に進んでおり、2014年度に作成する報告書にてそのデータを公開する。研究協力者がこの資料を用いた修士論文を執筆中である。また資料収集の過程で、1940年代後半~70年代にかけて社会科教師吉見敏夫氏が収集した文献、作成・上演したラジオ劇台本が多数みつかり、関係者(元教員林弘子氏他)の聴き取りも進めている。当該期の学校教育のなかで、京都地域の歴史や現状がどのように取り上げられたか、教員・生徒・学生の歴史意識に与えた影響を考察する上で貴重な資料であり、他地域の調査で得た地域住民の認識との比較にも活用出来る。 上羽絵惣資料については、京都産業大学むすびわざ館への全点一括移管が確定し、古文書に適した環境での保管・公開が可能となった。貴重な地域資料の保全・活用の筋道を作ったといえる。この資料を用いた展示企画にも関与する予定である。 また、映画『祇園祭』関連資料の調査・研究を進めるなかで、「映画の都」とかつて呼ばれた京都において歴史映画がどのように享受されていたかに関する基礎データがないことが判明し、敗戦直後から1950年代にかけての映画の上映情報を新聞のマイクロフィルムから収集する作業に取りかかった。 研究の進展に伴い、退職教職員や学芸員、各地の地域住民との連携がさらに拡がり、多様な地域資料の情報が集まり、新たな検討課題が得られる態勢が出来つつある。その反面、当初予定していた三品彰英関連資料の追加調査、立命館大学夏期日本史公開講座関連の座談会等を企画することが出来なかった等、一部に遅れが出ており、これらは次年度への継続課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果に基づき、京都・奥丹後教職員組合資料、立命館大学日本史学研究室所蔵資料、吉見敏夫氏旧蔵ラジオ劇関係資料等の目録作成を進め、アーカイブ化する。併せて1960年年代当時を知る元教職員・学会研究者・地域史サークルのメンバー・ラジオ劇関係者等の聴き取りを行い、ここまで併行して行ってきた調査成果を重ね合わせて、京都地域における住民の歴史意識の実態や変化について検討する。加えて他地域の現地調査を行い、自然災害からの復興に関する住民の意識との比較研究を行う。 また、戦後京都における映画・紙芝居受容史の資料として、『京都新聞』紙上の映画上映情報の収集作業を進め、1945年から1960年までの上映作品と公開館・時期等を目録化し、その傾向について整理する。また映画『祇園祭』の作成過程に関し、京都府京都文化博物館所蔵の伊藤大輔文庫資料、当時の映画雑誌、鉾町住民からの聴き取り等をもとに論考を執筆する。さらに、継続課題となっている三品彰英旧蔵資料について、追加調査を行い、目録を完成させる。 以上の成果に関しては、本科研の最終年度報告書にまとめ、刊行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は新たな調査先が拡大し、調査回数・同行する研究協力者の人数も増えたため、現地調査旅費の割合が当初の予定以上に大きかった。2014年3月の京丹後市での資料調査にさらに数名が参加予定であり、それを見越してカメラ撮影台やハンディビデオカメラ等の調査機器についての購入を見送ったが、参加人数が減ったため未使用額が生じた。これらの物品は次年度に購入したい。 次年度は本科研の最終年度に当たり、成果報告書の刊行と公開で行う研究会の開催を予定している。その刊行費用・研究会事務費・招聘者の旅費などの支出を要する。また引き続き資料調査を行うための旅費、調査で使用するカメラ撮影台・ハンディビデオカメラ等を購入したい。 また目録作業に大学院生等のアルバイトを用いる関係で、人件費の割合も増える見込みである。
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