研究課題/領域番号 |
23520845
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
志村 洋 関西学院大学, 文学部, 教授 (90272434)
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キーワード | 中間支配機構 / 小藩 |
研究概要 |
平成24年度は、岩村田藩割元役篠澤家文書の調査・整理を中心に進めた。宿泊調査で目録調取と写真撮影を行い、その結果、同文書のほぼ全てについて目録作成が終了した。昨年度調査分と合わせて、今科研調査で新たに明らかになった史料点数は1366点であった。この全点調査の結果から、篠澤家は、名主役を代々務める一方で、寛政7年頃以降に割元を称するようになったことが明らかとなった。割元の機能としては、昨年度に見通しを得た、武家奉公人徴発がその主たる職務であったとする見方がさらに確実なものとなり、領内他村の年貢徴収や宗門人別改等の機能は一切見られなかった。また、他藩大庄屋ではよくある堤川除普請等の人足徴発機能も、ほとんど窺われなかった。勝手賄機能や用金調達といった職掌もほとんどみられず、岩村田藩割元役の職掌や経済的役割は、一般の名主層と大差ないことが分かった。他方、武家奉公人徴発機能については、善光寺平の人宿との連携が見られ、割元による直接徴発と人宿を介した間接徴発との2方式が採用されていたことがわかる。とりわけ大坂加番勤務に伴う奉公人徴発史料が中心をなしていることから、岩村田藩割元役に見られる諸特徴は、大坂定番・加番を勤める譜代小藩の大庄屋に共通した性格である可能性がある。/林田藩代官澤野家に関しては、日記翻刻作業をさらに進めて、昨年度翻刻した5年分に加えて、嘉永2年~5年の4年分について翻刻を行った。調査の結果、一部史料の乱丁が判明するなど、今後翻刻資料の精査が必要となったが、代官の主な職掌は明らかになりつつある。林田藩代官の特徴としては、領内から大庄屋経由で出された金銭訴訟類の内容が摘記され、村々での盗難届け等が記載されるなど、中規模藩のそれと比べて、領内村々への細かい支配が行われていたことが窺われる。また、林田藩大庄屋は岩村田藩割元とはかなり異なる職掌を有していたことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
林田藩については、翻刻した澤野家文書の精査が十分に進んでいないことと、大庄屋三木家文書の分析が進んでいないことが大きい。林田藩の場合、大庄屋に多くの機能が集中していたことが判明してきたため、三木家文書の分析に力を傾注する必要が出てきた。 岩村田藩については、割元役の機能が限定的であったことが判明した結果、同藩の支配構造全般を理解するためには、割元家の史料の分析だけでは限界があることが明らかである。郡方役人や陣屋元の郷宿などといった他の史料も可能な限り分析する必要が出てきたため、全般的に研究の進展は遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
林田藩については、澤野家文書の代官日記の精査をさらに進めるとともに、大庄屋三木家の役用日記の分析に重点を置いて研究を進める。 岩村田藩については、今年度調査で明らかになった割元関連史料のなかから、武家奉公人徴発関係史料を中心に突っ込んだ検討を行い、あわせて、補完的作業として、郷宿史料の分析も行う。 以上の両藩に関する個別分析を行った上で、居付型外様小藩と譜代小藩といった類型別に、小藩の支配構造の特徴について、総括的検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
大庄屋三木家文書、佐久市教育委員会所蔵史料の調査収集に、旅費と人件費・謝金を用いる。また、澤野家文書中の未翻刻分の代官日記の翻刻作業に謝金を充てる。 年度後半には、研究成果の取りまとめの一環として、史料目録および翻刻史料の公刊を行う予定であるため、その印刷代にある程度の研究費を充てる。
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