研究課題/領域番号 |
23520855
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研究機関 | 公益財団法人大阪市博物館協会 |
研究代表者 |
八木 滋 公益財団法人大阪市博物館協会, 大阪歴史博物館, 学芸員 (70311446)
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キーワード | 両替商 / 都市社会史 / 大坂 / 銭屋佐兵衛 / 安井家文書 / 井上市兵衛 / 千草屋 |
研究概要 |
近世大坂の両替商に関する史料の調査・収集およびその検討を中心に研究を推進した。 千草屋(平瀬)宗十郎家文書については、昨年度に引き続き、調査補助者を雇用して整理し、文化・社会関係史料を中心に約2,000点の史料リストを作成した。 銭屋(逸身)佐兵衛家文書については、昨年度収集した関連史料も含めて、熊本藩の明礬流通および同藩蔵屋敷との関係や各時期の当主の動向や家族関係について分析した。銭屋佐兵衛家全体については、外部研究者と研究会を開催して、知見を得ている。それらを総合することによって、店全体の経営・奉公人・家族関係の全容および蔵屋敷との様々な関係が明らかになりつつある。 南組惣年寄安井家文書の新出史料の分析によって、これまでは部分的にしかわからなかった17世紀道頓堀の町人の土地所有状況とその変化が明らかになり、都市開発の過程も詳しく判明してきた。これらの都市開発には、惣年寄や鴻池などの豪商・両替商も関与しており、このことも含めて判明する事柄は、17世紀の大坂の都市開発・町の展開過程の通説について全面的な再検討を迫るものである。 この他、東北大学附属図書館所蔵の井上市兵衛の幕末期の日記などの史料も調査・収集した。井上は鴻池善右衛門家の有力別家の両替商で、銭屋佐兵衛家の日記と同時代のものなので、両者の比較検討が可能であり、新たな知見が得られることが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平瀬家文書に史料整理ついては着実に進展はしているが、量が膨大なうえ、見た目より数量が多かったため、まだ終了には至っていない。 銭屋佐兵衛の研究ついても進展はしているが、まだ具体的な成果の取りまとめには至っていない。 当初想定していなかった安井家や井上市兵衛に関する史料について調査・研究をおこなったが、当初予定していた国文学研究資料館や大阪大学所蔵史料の調査にはまだ着手できていない。 以上をまとめると、「研究目的」の達成は、相対的にやや遅れ気味ではあるが、大きなものとは言えない。
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今後の研究の推進方策 |
平瀬家文書等の史料整理については、夏休みに集中的に調査補助者を雇用して推進し、年度内に成果を集約できるようにする。 調査未実施の史料調査(とくに遠方)や関連図書の購入についてもできるだけ夏までに終了させ、年度末までに成果が集約できるようにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度は年度途中で史料整理の調査補助者の賃金単価が直接雇用になったため減額(支出額で約4割減)になった。このため実支出額は、当初の想定額よりかなりの低額となった。この分は、史料整理の作業量も増加しているので、大学院生などを雇用しやすい夏休み期間に、人数および出勤日数を増やし、史料整理等を推進することに充当する。(40万円程度) また、5月中旬までに、賃金の支払や物品の購入など3月末日で支払額が確定していなかった分(繰越分)も含み、すでに約30万円を支出した。さらに、5月末までには10万円程度の支出も予定している。
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