最終年度となる平成25年度には、学術論文の刊行と、国内・国外の学会での研究発表によって研究成果の一部を公表したほか、論集の執筆と編集作業、トルコの文書館での資料調査などを主として行った。 連携研究者の小笠原弘幸のほかに、7名の研究協力者とともにオスマン帝国近代の教育社会史に関する論文集の作成の準備を行い、原稿を出版社に提出した。8~9月頃の出版になる予定である。 研究代表者は、オスマン帝国における女子教育にについて、タンズィマート以前と以後の連続・非連続性に関連する問題について考察した論文「タンズィマート以前のオスマン社会における女子学校と女性教師」を『オリエント』誌上に刊行した。また、オスマン帝国近代における教育を福祉や慈善の問題と関連させて概観した論考を、福祉国家と教育に関する論文集に刊行した。 学会での発表としては、研究代表者が、トルコ南部の町イブラドゥにおけるカーディー(裁判官)家系の教育などについての報告を日本中東学会年次大会で行ったほか、19世紀以前のアナトリアにおける法文化の地域差を法学書の流通や裁判官の教育と関連づけた研究を、北米中東学会と日本オリエント学会の年次大会で報告した。そのほか、連携研究者の小笠原弘幸、研究協力者の長谷部圭彦、佐々木紳らが、オスマン帝国の教育及び出版に関してそれぞれ成果を公表した。 資料調査としては、8月に研究代表者がトルコに出張し、首相府オスマン文書館、スレイマニエ図書館、イスタンブル・ミュフティー局附属文書館、イスラーム研究センター附属図書館などで、オスマン帝国における教育、及び、それに関連して書物の受容や流通に関わる資料を調査、収集した。
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