研究課題/領域番号 |
23520864
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
富澤 芳亜 島根大学, 教育学部, 教授 (90284009)
|
キーワード | 中国 / 近代 / 技術移転 / 経済史 |
研究概要 |
本研究の目的は、近代中国工業の技術的基礎を、1910年代~50年代を期間として、教育機関による技術者養成と、こうした技術者の企業内での活動を通してあきらかにするものである。そのため第三年度においては、以下の三点について実施することとした。それぞれについて成果を記すことにする。 ①1910年代~50年代の中国経済史を産業技術史の観点から読み直して情報の整理を行う。これについては、富澤芳亜「論日本対中国棉紡織史研究的成果與課題」『東海歴史研究集刊』第1期、187~226頁、2013年9月として公刊することができた。 ②国内の研究機関における文献・資料の収集をおこなった後に、中国の図書館・文書館において資料の収集を行い、必要な情報の整理・分析を行う。これについては、国内では東洋文庫などにおいて継続的に調査を行った。国外では2014年2月に上海図書館での調査を行った。またこれらの成果を基礎に、富澤芳亜監修『中国占領地の社会調査II 華北鉱山の調査』①~⑨、近現代資料刊行会、2013年を公刊することができた。 ③近代中国工業の技術的基礎について、幾つかの作業仮説を設定する、この仮説の妥当性について第三者が客観的評価を下すために、所属する研究会などにおいて報告を行う。これについては富澤芳亜「1920至1930年代厳裕棠家族経営的紡織企業」(李培徳編著『大過渡――時代変局中的中国商人――』商務印書館(香港)、142~183頁、2013年11月)、および富澤芳亜「新聞記事から見る華北認識」(本庄比佐子、内山雅生、久保亨編著『華北の発見』東洋文庫、79~102頁、2013年12月)の二編の論文を公刊することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度まで、史料面や人的ネットワークの面で十分な準備をしてきたこともあり、順調に推移している。 情報整理の面では、昨年度の報告書に示したように富澤芳亜「論日本対中国棉紡織史研究的成果與課題」『東海歴史研究集刊』(第1期、2013年9月)として、中国語で公刊することができた。また昨年度に行った東京工業大学での調査をもとに、中国紡織業技術者のデータベース化をほぼ終えることができた。これにより、これまで明かではなかった日本留学経験者、欧米留学経験者、中国の教育機関卒業者の全貌をとらえることが可能となっている。 史料収集の面では、「棉業月刊」、「紡織世界」、「華北棉産改進会会報」、「紡織建設月刊」、「紡工」、「紡建」など多数の貴重な工業技術関係の民国期の雑誌をDVDにて収集することができた。また京都大学人文科学研究所所蔵の無錫広勤紡織廠の一次史料を収集することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度も、勤務校での諸事情からまとまった時間の確保が困難となり、国外の研究機関での調査を充分に行うことができず、これにより次年度使用額が発生することとなった。 平成26年度においては、これまでの成果を基礎に①国外、海外において文献・史料の収集を継続して行う。②史料収集や研究会での議論をもとに、作業仮説を検証する。③こうした成果を学会報告、雑誌論文、学術書の公刊などを通して、広く社会へと発信する。特に27年度には、国際経済経済学会の日本での開催が決定し、申請者も報告が決定している。この機会を利用して、研究成果を広く海外に発信したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度も勤務先の島根大学教育学部において共生社会教育講座主任に再留任せねばならないなど様々な事情が重なったため、国内外における資料調査の時間確保が困難となり、そのために残額が生ずることとなった。 平成26年度は資料調査のための時間を確保できる目途が立っている。そのため平成26年度の研究費とあわせて、上海図書館のデータベースについての実地調査を引き続いて実施する。また平成25年度にDVD形式で購入した中華民国期の雑誌資料についての分析を進め、必要に応じて新たな資料を購入する。また国内においては、東洋文庫に導入された『申報』、京都大学人文科学研究所の大成民国期データベースなどの、デジタル資料群の利用を積極的に行うための出張旅費に充てる。
|