本研究は1989年に出土した雲夢龍崗秦簡の禁苑律令にはじめて見づけた禁苑の新史料にしたがって、秦帝国における全国に散在した禁苑群に関する研究である。研究成果は三部に分けて、1秦地禁苑研究は上林苑・渭水上流の秦旧都地・御陵周辺における禁苑群の実像を明らかにした成果。第二部の東海沿岸禁苑研究は、山東半島・渤海湾・江淮下流「呉地」・粤地における禁苑群実像を明らかにした成果。第三部の長江・黄河中流禁苑研究は、楚王城・長江中流域禁苑・「巡北辺」と最期の禁苑を明かにした成果。従って筆者はこれまでの秦帝国の研究と異なる秦帝国各地方に散在していた禁苑ネットワークの存在とその帝国の政治機能を明かにした。
|