研究課題/領域番号 |
23520866
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
荒武 達朗 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (60314829)
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キーワード | 中国東北地方 / 満洲 / 中国近代史 |
研究概要 |
今年度五月に山東・臨沂大学にて開催された国際シンポジウム『大店庄氏家族歴史与地域文化国際学術研討会』において「十九世紀華北的社会動乱与大店庄氏」を発表した。報告の中で大店庄氏という家族の十九世紀から二十世紀にかけての歴史について考察を行った。加えて議論の中で、山東青州の駐防八旗に対しても分析を加え、当地における満洲人を含めた八旗と漢人との社会関係について検討した。この点に関してシンポジウムの中で情報収集を行うことも出来た。また南京についても、旗人と旗地に関する知見を広げることが出来た。市街地に混在する旗地、並びに市外の長江中洲に存在する旗地の情況、在地社会での満洲人と漢人の関係を考察した。同時に市街地の零細な旗地や郊外の荘園に依拠して暮らす旗人の様態に関する史料を収集することが出来た。以上、山東と南京の八旗について理解を深めることで、本研究テーマである満洲の旗人と漢民族との比較考察が可能になったと考えられる。 今年度二月には台湾で主に文献収集調査を目的とする調査を実施した。中央研究院並びに国家図書館漢学研究中心に所蔵される満洲地域各県の文史史料を網羅的に閲覧することが出来た。加えて地方志史料についても収集した。さらに調査の過程において中華人民共和国初期の満族村落に対する民族調査を見出すことが出来た。 国内においては愛知大学などで東北地方の新地方志史料を閲覧し、特に各資料の「民族」の項目に対する考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に盛り込んでいた遼寧省でのフィールドワークは、2012年の暴動、並びにそれに基因する受入機関の態度変化によって頓挫を余儀なくされた。そこから台湾での文史史料、地方志史料の収集へと方針転換した。この調査実施の中で、これまであまり知られていなかった中華人民共和国初期の民族調査を閲覧、収集することが出来たのが成果の一つである。 さらに既述の通り南京地区の旗人、華北山東省の旗人についての情報を得ることが出来、満洲地域との比較研究を行う材料を手に入れることが出来た。 以上のことから現在までの達成度はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
杜家驥『清嘉慶朝刑科題本社会史料輯刊』(天津古籍出版社, 2008.1)及び中國邊疆史地研究中心『琿春副都統衙門档』(廣西師範大學出版社, 2006.12)より満洲地域の旗人と漢人間の社会関係について分析する。 以上を基本に、これまで収集した文史史料、地方志史料、民族調査の整理を通じて当該課題に関する考察を深める。 当初計画では清朝史研究、満洲地域関係のシンポジウムを実施する予定であった。だがフィールドワークが不可能となった今、特段にそれを実施する必要性は感じられない。故に割愛し、収集資料の成立と文字による成果の公表を重点的に行うこととする。
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次年度の研究費の使用計画 |
収集した文字資料と撮影した資料の整理のためパソコンを購入する予定であったが、消費税増税前の駆け込み需用により購入出来なかった。 旅費に関しては、台湾での調査実施に際して、LCCを利用した為、当初の予算よりも圧縮することが出来た。 複写代として見込んでいた「その他の経費」については、その多くを撮影にて消化できた為、費用がかからなかった。 上述の前年度に購入する予定であったパソコンは四月もしくは五月に購入する。 加えて未消化の「その他の経費」と「旅費」を合算し、七月から八月にかけて台湾で史料調査を実施する。
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