研究課題/領域番号 |
23520867
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川本 芳昭 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 教授 (20136401)
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研究分担者 |
藤野 月子 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 専門研究員 (30581540)
福永 善隆 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 専門研究員 (00581539)
戸川 貴行 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 専門研究員 (60552255)
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キーワード | 内廷組織 |
研究概要 |
代表者の川本は、本課題計画にかかわる成果として、「文献史から見た西南夷-中華帝国の構造との関連から見た」(宮本一夫編『東チベット先史社会―四川省チベット自治区における日中共同発掘調査の記録』中国書店、2013年)、「北魏内朝再論」(『中国魏晋南北朝史学会第十届年会論文集』北京文芸出版、2012年)などを発表した。また、研究計画通り日本国家の構成にかかわる国内調査も行った。また、同じく招請講演とともに海外調査を行う予定であったが、これは尖閣問題との関係で、中国側から延期要請があり、断念した。 分担者の福永善隆は「漢代における尚書と内朝」(『東洋史研究』第71巻第2号)とする研究成果を、同じく分担者の藤野月子は「和蕃公主の降嫁における婚儀の実態」(『東方学』、第124輯)、「北朝隋唐的和蕃公主降嫁」(『中国魏晋南北朝史学会第十届年会論文集』)、「唐代和蕃公主考―降嫁に付随して移動したヒトとモノ―」(『九州大学東洋史論集』第41号)とする研究成果を発表した。同じく分担者であった戸川貴行は、昨年度、学術振興会特別研究員に採択されたため、分担者から外れた。 川本は漢代、および遼代の研究を深め、研究当初の見通しの正しいことを一層確信するに至った。また、今年の調査によって日本古代の宮城制度についての研究も進展した。また、福永の研究により、漢代武帝以降の内朝制度についての研究はほぼ所期の成果を上げた。また、藤野は皇室の婚姻という儀礼と東アジア世界の構造についての研究を進展させ、本研究の目的に沿う研究成果をあげつつある。 尖閣の問題のため海外調査は実施することが出来なかったが、おおむね所期の目的にそう成果をあげることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者および分担者は、昨年度、上記「研究実績の概要」に示した成果を挙げた。これは当初の研究計画が順調に実施されたことを示している。 漢代の研究については、分担者の福永が担当したが、その成果は武帝期以降に係わるものである。武帝期より以前については代表者の担当であり、それについては前々年度の代表者の成果に、その観点を示しておいたが、それと北魏・元などとの関連の問題が残されている。この点についての考察は、全体構想とかかわるものであり、当初の研究計画に示したように最終年度にかけておこなう。 昨年度、倭国の国制について考察するため、奈良地域の調査をおこなったが、その調査の過程で、難波地域の調査の必要のあることに気づいた。それは倭国の武器庫の存在した石上神宮以前の武器庫が堺の忍坂であり、それが内廷によって管理されていたこと、そしてそれが倭の五王の一人・済の時期であることに気づいたことによる。倭国の国制は倭の五王の武のとき大きく変容するとするのが通説であるが、このことはそれがその二人前の済の時期である可能性を示しており、北魏との平行性を考える本研究との関連で重要である。今年度の計画は、倭国の国制について考察することになっており、上記の点について一層深めた考察ができればと考えている。 また、昨年度、元や遼の問題について考えたが、未解明のまま残された問題も多い。とりわけ北魏との関係で、元の部族制度がどのようなものであったのか、宮廷での宿直制度が部族制度とどのように係わっているのかということは、本研究との関係で重要である。大雑把な把握はなしえているが、この点についてもさらに追究したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、当初、本研究計画で年度計画としてあげた倭国の国制について、上記「現在までの達成度・理由」で述べた観点から推進する。 また、最終年度を目指して、北魏、遼、元、漢族王朝である漢、及び倭国において、相似た制度が出現した理由について考えることにしている。前三者の場合、そこには部族制の問題があることは把握したが、漢、倭国との類似はいまだ十分には把握できていない。それを宮城配置などの観点から考察しているが、それぞれの王朝の建国集団の構造解明という観点から、それを目指すべきであると考えている。 また、当初の研究計画で掲げたように、最終年度においては、著作の刊行を目指しているが、本年度でその大まかな整理をしようと考えている。 なお、本研究の中心課題である各王朝中枢の構造如何の問題は、その最も外側に中華世界外との接触面を持つ。北魏、遼、元、倭国を建国した民族は非漢民族であり、所謂夷狄である。研究者はこうした問題にも関心を持ってきたが、刊行を予定している著作ではこの問題についても考察したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
先に報告したように、本研究の分担者であった福永は、就職したので分担者から除外した。 ただし、福永の研究は、前年度の成果において、ほぼ本研究との関係分は完了したので計画遂行に問題はない。 代表者として川本は、上記【現在までの達成度】・「今後の研究の推進方策」に示した問題意識から、また、当初の研究計画の年度計画に記した非漢族王朝としての北魏、元、満州の王都の構造調査、および倭国の国制にかかわる追加調査を考えている。 また、上記の現在までの達成度】・「今後の研究の推進方策」に記した問題については、解明できたものから順次、学会発表をおこなう予定である。 また、遼代についてはほぼ関連成果を把握することができたが、元、清については不明な点が多い。これらの成果物の把握にもつとめたい。
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