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2012 年度 実施状況報告書

明治日本の軍隊と近代中国のナショナリズムの形成

研究課題

研究課題/領域番号 23520871
研究機関島根県立大学

研究代表者

李 暁東  島根県立大学, 総合政策学部, 教授 (10405475)

キーワード軍国民思想 / 軍国民教育 / 留学生 / ナショナリズム / 陸軍士官学校 / 国際研究者交流、中国
研究概要

1、アメリカスタンフォード大学に所蔵する『蒋介石日記』に関する資料調査を実施した。また、ハーバード大学で近代中国に関する研究を確認し、資料調査を行った。
2、台湾中央研究院近代史研究所を訪れ、黄克武所長、黄自進研究員に対してインタビューを行い、蒋介石研究について意見交換をした。また、黄克武氏に来年度日本で開催する予定のワークショップで報告することを要請し、快諾をしてもらった。それから、近代史研究所で資料収集を行った。
3、中国全国各地の図書館に散在する『武学』雑誌(日本陸軍士官学校の中国人留学生が作った雑誌)をかき集め、一部を除いて現存するものをほぼ揃えた。
4、中国東北師範大学の韓東育教授を招聘し、研究会を開催して、「東アジア世界の自他構図と表現の難しさ」と題する報告をしてもらった。近代東アジアのナショナリズムの相剋について議論をした。
5、連携研究者飯田泰三氏、研究協力者小林共明氏と議論を重ね、「軍国民思想と近代中国民族主義の形成」と題する論文を著し、2013年4月に中国の浙江大学蒋介石研究センターで開催される「蒋介石と近代中国」シンポジウムでの報告に臨んだ。この論文は、従来、ほとんど研究されてこなかった近代中国ナショナリズムの重要な流れの一つであった「軍国民」思想について分析し、その特質を明らかにしたとともに、「軍国民」思想の最初の唱道者が日本陸軍士官学校の中国人留学生であり、彼らが「軍国民」思想を唱道したのは、同時代の尾崎行雄や徳富蘇峰から大きな影響を受けたのであることを実証した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究の目的は、近代日本に留学した中国人留学生や知識人に対する明治日本の軍隊の影響を明らかにすることである。年度中に予定通りに資料調査や研究調査を行い、研究対象を具体的に特定した。資料を調査し読み込む作業を進む過程で、「軍国民」思想という概念の重要性に気づくようになり、「軍国民」をキーワードに、それを誰が、いつ、最初に唱えたのか、そして、留学生たちが日本で誰の、何の書物や文章の影響を受けて「軍国民」を唱道するようになったのか、などについて考察し、それら明らかにして、論文にした。年度内に研究成果を発表できなかったが、新年度の初めの4月に中国で開催されるシンポジウムで報告する予定である。よって、研究はおおむね順調に進展しているのである。

今後の研究の推進方策

1、前年度の研究成果を海外や、日本国内で報告し、専門家と意見交換をする。
2、「軍国民」思想をキーワードに、蒐集した『武学』雑誌を分析し、陸軍士官学校の中国人留学生の思想の特質及び日本の影響を明らかにしていきたい。
3、研究成果をまとめるために、必要に応じて追加資料調査を行う。関連資料や図書を購入する。
4、日本国内でワークショップを開催し、中国大陸、台湾から関連分野の学者を招聘して、議論を深めるとともに、研究成果を公開する。
5、最後に、研究成果を社会に還元するために、報告書を作成し、研究成果を学会誌などに投稿する予定である。

次年度の研究費の使用計画

前年度、台湾への調査研究のために、研究代表者と研究協力者の二人の予算を取っていたが、研究協力者が勤務校の仕事の都合により調査研究を実施できなくなった。研究代表者は、一人でも研究調査を実施することが可能だし、今年度に開催する予定のワークショップでより充実した成果を出すために、予算を確保して海外から一人でも多くの専門家を招聘したい、と判断して、一人で台湾調査研究を実施した。
今年度は旅費の余剰金を生かして、中国大陸、台湾の両方から専門家を招聘し、ワークショップを開催して、より多角的に議論を行い大きな成果を出していきたい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 「中国対日外交的課題」(「中国の対日外交の課題」)2012

    • 著者名/発表者名
      李暁東
    • 雑誌名

      『外交観察』

      巻: 1 ページ: 149-166

  • [雑誌論文] 「筧克彦与近代中国立憲構想的展開」(「筧克彦と近代中国立憲構想の展開」)2012

    • 著者名/発表者名
      李暁東
    • 雑誌名

      『憲政輿行政法治評論』

      巻: 6 ページ: 356-374

  • [図書] 転形期における中国と日本――その苦悩と展望2012

    • 著者名/発表者名
      飯田泰三・李暁東編
    • 総ページ数
      319
    • 出版者
      国際書院

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公開日: 2014-07-24  

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