近代中国のナショナリズムの形成は、近代日本をぬきにして語れない。本研究は若い中国留学生や知識人たちに対する明治日本の影響を明らかにすべく、近代日本に留学した軍関係の中国人留学生の言論と行動を中心に考察し、日中間のナショナリズムの連鎖・対立関係の一端を明らかにしようとするものである。 今年度は、これまで収集した資料を読み込んだ。それから、北京、上海、杭州、広州など各地に散在している陸軍士官学校の留学生が発刊していた雑誌『武学』の収集に努め、現存するもののほとんどを入手した。 研究の成果は、まず、2013年4月14日に、中国浙江大学蒋介石研究中心主催の国際シンポジウム「蒋介石と近代中国」で報告をした。それから、2014年1月11日に、神奈川大学留学生研究会との共催で、本研究プロジェクト最終年度の公開シンポジウム「中国人留学生と近代日本」を神奈川大学で開催した。中国から近代中国留学生研究の専門家尚小明教授(北京大学歴史学部)、胡連成准教授(華僑大学日本語学部)を招聘した。両氏はそれぞれ「青柳篤恒-ある埋没された袁世凱の高級スパイ」、「光と影――近代中日留学生と外交――」と題する報告を行った。研究代表李暁東は、「中国人留学生と軍国民思想」と題する報告を行った。そのほかに、大里浩秋教授(神奈川大教授)は「中国人留学生と日本」、見城悌治(千葉大学教授)は「近代日本の工芸教育と中国留学生」、川崎真美(中国研究所)は「留日学生派遣のススメ-張之洞への面会者たち」、胡頴(神奈川大学大学院博士課程)は「清末留学生の経費問題-『官報』を素材に」を報告した。孫安石、周一川、王雪萍諸氏はそれぞれコメントを行った。留学生専門家が多く集まったため、充実した議論ができた。現在、シンポジウムでのコメントを受けて、報告原稿を修正しており、2014年度中に投稿する予定である。
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