近代日本に留学した中国人留学生が近代中国のナショナリズムの思想形成と運動の展開に重要な一翼を担っていた。留学生たちは、ナショナリズムが興隆していた日本において、西洋の近代的知識を受容し、天下国家から近代的ネイション・ステートへの意識転換を実現した。そして、学生たちの近代的ネイション意識を表しているものの一つは軍国民思想であった。軍国民思想は、最も早い時期のナショナリズム運動を支える理念として、そして、近代中国の政治変動方向に大きな影響を与えた思想として、清末民初に大きな影響力を持っていた。本研究は、これまできわめて不十分だった軍国民思想に関する研究の空白を埋めたものである。
|