楚文化の指標器である楚式鬲を中心資料として、楚文化の形成と展開及びその変容を考察し、楚文化は湖北省・河南省・陝西省三省交界地帯で発生し、その後西周から春秋にかけて漢水西側荊山東麓を南下し、ついで、春秋から戦国にかけてしだいに漢水東側地域に侵入していったこと、楚式鬲の最盛期は春秋中期であり、その後はしだいに周式青銅器を模倣した楚式青銅器が楚文化の指標器となっていたことを明らかにし、この楚文化の歴史的変遷は、西周時代の拠点丹陽は漢水上流に存在し、春秋戦国時代の拠点郢都は湖北省西部荊州地区(紀南城)に存在したという、楚国の歴史地理的推移に正しく対応していることを確認した。
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