2014年度は最終年度としてプロジェクトのまとめと今後につながる研究の方向性の確認とをおこなった。第一の成果は、古写真の調査・整理・公開の方法として学習院大学所蔵の古写真・絵葉書・ガラス乾板資料をまとめ整理し、『アジアを観る―学習院大学所蔵古写真・絵葉書・ガラス乾板』(共著書、学習院大学国際研究教育機構編、学習院大学、2015年3月)を刊行した。本書は古写真と同じアングルから現代の街を撮影し、保存状況を比較するという手法を用いている。この方法は代表者が足立喜六『長安史蹟の研究』と同じアングルから現代の西安の古建築・遺跡を撮影したこれまでの研究成果を援用したものである。学習院大学の資料には西安の絵葉書はない。また、他機関においても西安に関する古写真は存在していても、絵葉書は確認されていない。絵葉書資料は朝鮮・台湾そして満洲および北平・青島など、戦前の日本の東アジア進出とかかわる地域に集中している。このことと西安の絵葉書資料が見られないことは関係している可能性はある。今後も西安の絵葉書資料の調査をすすめたい。第二の成果は2013年度に実施したシンポジウム「東洋学の歩いた道」の報告内容を「アジアを学ぶ-近代学習院の教育 ~人と人とのかかわりから~」(『学習院大学国際研究教育機構研究年報』1号、学習院大学国際研究教育機構、2015年2月)としてまとめ、公刊した。このなかで注目したフランスに拠点を置いた骨董商C.T.ルーについては2014年にフランス語・中国語(台湾)で相次いで盧芹齋(C.T.ルー)伝が出版され、脚光を集めている。また、フランスの詩人で中国各地を訪問し、西安の古写真を多く残しているヴィクトル・セガレンに関する伝記の邦訳も出版された。このように百年前の西安の建築および文物の現状を比較検討する資料はさらにひろがってきている。本研究終了後も、引き続き、足立喜六遺品資料の調査を継続する。
|