本研究の目的は、8世紀から10世紀を中心に、日本と渤海・新羅及び中国(宋・隋・唐)との間で交された外交文書について、諸写本を調査して校訂したテキストを作成すると同時に、そのテキストに基づいて読み下しと註釈とを作成することである。また、その作業によって得られた知見に基づいて、当該期の国際関係について多角的な検討を加え、対外関係史に関する新たな成果を提示することである。 以上の目的に従い、該当する外交文書の読み下し・註釈その他の作成を進めながら、訳註作業従事者の研究発表を行うとともに、必要に応じて外部の専門家を招いて研究会を開いた。平成23~25年度の3年間に都合25回の訳註作業の会合と研究会とを開き、訳註作業の完成した平成26年1月26日には浜田久美子(国会図書館)・古畑徹(金沢大学)・榎本淳一(工学院大学)・藤野月子(九州大学)・荒川正晴(大阪大学)・森公章(東洋大学)の諸氏を招き、本研究の内容に合わせて、「古代東アジア・東ユーラシアの対外交通と文書」と題する研究会を開いた。 こうした作業や共同研究の活動と並行して、本研究の成果を書物として公刊することを企画し、平成25年度科学研究費助成事業(研究成果公開促進費、課題番号255081)の交付を受け、本研究の研究代表者金子修一・連携研究者鈴木靖民・石見清裕及び浜田久美子の編集で『訳註日本古代の外交文書』(八木書店、本年2月刊)として刊行することができた。なお、当初は該当する外交文書は40通ほどであるという見通しであったが、研究作業が進むにつれ、従来注意されていなかった史料も見いだすことができ、最終的に訳註を作成した文書は50通となった。
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