研究課題/領域番号 |
23520879
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研究機関 | 東京女学館大学 |
研究代表者 |
医王 秀行 東京女学館大学, 国際関係学部, 教授 (20269426)
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キーワード | イスラム / ムハンマド / コーラン / ハディース / メッカ / アラブ |
研究概要 |
7世紀にイスラムという信仰体系を一人で作り上げたムハンマド(570年頃―632年)の伝記を翻訳し、それをもとに研究を継続した。日本にはコーラン訳が3種類存在し、また、ムハンマドの言行録であるハディース集の邦訳も存在する。翻訳作業に用いたドイツのライプチヒ版(他にカイロ版も併用した)は、アラビア語本文が1026頁、4人で翻訳を始めてから、今回岩波書店で4巻が完結するまでに10数年の作業を要した。全訳としては英訳、仏訳に次ぐものである。著者のイブン・イスハークは704年頃、アラビア半島のメディナに生まれ、767年バクダードに没した。メディナやエジプトで権威のある学者からムハンマドに関わる伝承を膨大に収集、749年にアッバース朝が成立すると、ほどなくイラクに移住し、第2代カリフ、マンスールに本書の元となった『マガーズィーの書』を献じた。アッバース朝政府のお墨付きを得たこの書は、天地創造から始まる大部の書であり、後世の歴史学者に多大な影響を与えた。これを文献学者イブン・ヒシャーム(832年没)が、ムハンマドの伝記部分を中心にコンパクトにまとめたのが、『預言者伝』である。イブン・イスハークの原著『マガーズィーの書』は現存していない。イブン・イスハークはムハンマドの死後、百年を経た時期に活躍した学者であるが、彼以前に、ムハンマドの伝記をこのような形で体系的にまとめた例はなく、後世の歴史学者によるムハンマド伝も、本書を補完する性格のものが多い。『預言者伝』は類書の追随を許さない、ムハンマドの伝記の決定版として、現在に至るまで、イスラム世界で広く読みつがれてきたのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年目に預言者ムハンマド伝を刊行し、その成果をもとに、2年目は、暦の研究、サダカの研究、巡礼形式の変遷などを扱った。アラビア語史料は歴史史料、コーラン解釈資料などを中心に収集し、海外の研究文献も最新のものを取り寄せるよう注意をはらった。また、近年、19世紀の研究書の復刻版が盛んに出るようになったので、それらも収集するように努めた。海外の学術雑誌に投稿すべく、論文を推敲している最中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、アラビア語史料、特に歴史文献、地理書、法学文献に注意を払いながら必要書籍の購入を継続していく。海外の最新文献を収集し、論文執筆に役立てたい。今年度中には、海外の著名な学術雑誌に論文を投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
アラビア語史料購入。 欧米文献の購入。 邦語文献の購入。 翻訳料、校正料。 これらに60万円を出費する予定である。
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