研究課題/領域番号 |
23520880
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研究機関 | 新潟国際情報大学 |
研究代表者 |
小林 元裕 新潟国際情報大学, 情報文化学部, 教授 (80339936)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 東京裁判 |
研究概要 |
当該年度は主に次の2つの点から研究に取り組んだ。 一つ目は東京裁判に関する資料でまだ未購入であった基本的な資料(『東京裁判への道-国際検察局・政策決定関係文書』全5巻、『東京裁判と国際検察局-開廷から判決まで』全5巻、『連合国戦争犯罪委員会』全15巻)を購入して今後の資料収集、特に公刊されていない公文書類の収集方針をかためること、二つ目は国民政府の公文書を所蔵する台湾の国史館で、まだ収集していない東京裁判関係の公文書の存在を確認し、収集補完することであった。 第一の公刊されている資料収集に関しては当初の予定通り購入でき、連合国側、特に英国、米国が所蔵する公文書の資料集を入手することができた。これら以外にも、中国で出版された東京裁判関係の研究書(上海交通大学東京審判研究中心編『東京審判文集(東京審判研究叢書1)』上海交通大学出版社、2011年)等を入手した。『東京審判文集』は、東京裁判における中国側副検察官を務めた向哲浚、倪征オク等の手記を収録しており、資料集としての価値も高い。 第二の台湾国史館での公文書収集も予定通り実施し、これまで未確認だった連合国戦争犯罪委員会に関係する資料ファイル数点を確認し、英文以外の中国語資料も含む、外交部の『聯合国戦罪委員会遠東及太平洋分会』の存在を知った。しかし残念なことに今回は滞在時間の関係で資料複写が全て終了しなかった。上記の資料以外にも外交部の『亜東司毎週工作報告』のような重要資料を発見したが、これは全て毛筆による手書き資料であり、読解に苦労を強いられた。これも複写が完了しなかったため、国史館での資料収集は次年度も継続して行う必要が出てきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東京裁判開廷に至るまでに作成された連合国戦争犯罪委員会や国際検察局の資料でリプリント版として編纂された資料に関しては、当初の目標通り購入できた。また中国大陸での東京裁判関係図書も購入できたので、刊行資料物の収集という意味ではかなりの資料を予定通り収集できたといえる。しかし、これらの資料を正確に読み込み、内容を充分に把握する作業にまでまだ到っていない。特に連合国戦争犯罪委員会の資料集は英文資料のみの収録で、国民政府が作成したオリジナルの中国語資料を収録していない。そこでこの英文資料の内容をまず確認し、オリジナルである中国語資料の存在を確認して内容を付き合わせ、さらには英文に翻訳されていない資料の存在を発掘する必要がある。 また台湾国史館における公文書、原文資料の収集に関しては、上述したように多くの未収集資料の存在を発見したものの、複写を完了するまでに至っておらず、公文書資料の収集としてまだ不十分である。 以上のような理由から、初年度は資料読解、資料収集の両面において研究の進展具合が遅れているといわざるを得ず、達成度はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、第2年度は、東京裁判関係の資料を多く所蔵すると考えられる中国第二歴史档案館での資料収集を中心に、ここでの資料収集が不可能な場合は英国の国立公文書館(National Archives)での資料収集を予定していた。そのために初年度の早い段階で、中国第二歴史档案館に知り合いのいる日本人研究者を通じて同館に対して東京裁判関係の公文書を閲覧できるかどうか問い合わせたところ、同テーマに関する公文書は依然として公開できない旨返答があった。したがって中国大陸での公文書資料収集は実行不能であることがわかった。したがって第2年度は、当初の予定でいえば、英国での資料収集を中心とすべきだが、上述したように台湾国史館で連合国戦争犯罪委員会関係の中国語資料が英文資料とともに多く所蔵されていることを確認したので、当初の予定を変更して、第2年度は台湾国史館での資料収集を中心に進めたいと考える。中でも外交部の公文書である『聯合国戦罪委員会遠東及太平洋分会』、『亜東司毎週工作報告』を漏れなく入手して分析を行いたい。 中国では、中国第二歴史档案館での資料収集が不可能となったが、2011年度に上海交通大学で東京裁判研究会が成立し、東京裁判関係の資料収集及び研究を開始した。そこで、可能であれば、今後、この研究会と連絡をとり、情報交換を行っていこうと考える。そのために第二歴史档案館ではなく、情報収集のための中国出張を計画する。 以上の他に、初年度に購入した英文資料『連合国戦争犯罪委員会』と国際検察局関係資料集の内容を確認して、連合国内において中国国民政府が戦犯裁判に対してどのような方針で臨み、政策を立て、そして実際にどう動いたかを把握する。 最終年度である第3年度は、英国で資料収集を行い、台湾が所蔵していない中国関係資料が英国に存在するかを確認して資料収集を万全にしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
第2年度となる次年度は、初年度からの繰越金となった約20万円と当初の図書購入予定金額である20万円の合計40万円を、戦犯裁判に対する中国側の方針や政策決定に影響を及ぼした蒋介石及び国民政府関係の資料購入に充てる。具体的には『蒋中正総統档案:事略稿本』(現在は第62巻まで出版済み、約20万円)、『蒋介石書簡集』全3巻等を考えている。 また残りの約70万円を当初の予定通り、国内出張(国会図書館×2)、中国出張、そして英国出張の代わりに台湾出張に使用する。
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