当初の研究計画では、最終年度である平成25年度に英国国立公文書館と米国国立公文書館で連合国戦争犯罪委員会関係の資料を予定していたが、台湾の公文書館に相当する国史館で同委員会関係の英文資料だけでなく中国語資料も存在することを前年度に確認していたので、平成25年度も台湾での資料収集を継続した。一方、中国第二歴史档案館では所蔵資料のデジタル化を進めているが、結局、平成25年度までに東京裁判関係の資料公開は実現しなかった。東京裁判に関する主要な資料は前年度までに国史館でほぼ収集できたが、それでも同所が新たに整理し直した資料や私が見落としていた資料が存在し、それらを2014年2月24~27日に出張して収集した。今回は連合国犯罪委員会関係だけでなく以外に中国検事団を支えた駐日代表団に関する資料も収集した。 2013年11月12~14日、中国の上海交通大学で東京裁判に関する国際シンポジウムが中国で初めて開催された。日本からはこれまで東京裁判研究をリードしてきた粟屋憲太郎立教大学名誉教授らが出席し、私は科研費による研究成果の一部として「東京裁判と中国ーその研究成果と課題-」を報告した。日本だけでなく中国における東京裁判の研究状況を整理し、東京裁判と中国の観点から解明すべき課題をいくつか提示した。このシンポジウムには、中国の東京裁判研究者だけでなく、東京裁判で中国代表判事を務めた梅汝ゴウ、検事を務めた向哲濬、倪征オウの遺族も出席し、東京裁判関係者の資料について貴重な情報を得ることができた。またシンポジウムでは中国における最新の研究成果が報告され、従来、南京事件との関係を中心に論じられてきた東京裁判が、幅広いテーマのなかで見直されている近況を理解した。私のシンポジウムでの報告は、加筆修正したものが2014年中に上海交通大学出版社から国際シンポジウムの論文集として出版される予定である。
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