本研究の目的は、これまでほとんど利用されなかった官僚の履歴、家庭構成などを収録した清代の「同官録」を使って、前近代中国社会における官僚の出身資格およびその家庭状況を把握し、官僚たちを取り巻く社会環境および官僚の登用や昇進などを含む人間の社会移動の実態を明らかにすることにある。 この研究を通じて、『清代同官録簡目』を作成したほか、同官録の起源および同官録がもつ縦と横という二つの側面から、省もしくは官署を単位とした人事秩序の安定化に寄与しようとする機能を明らかにするとともに、現職の官僚を含む清末の人々が身分を向上させるために、科挙制度と捐納制度を利用した実態を数値的に説明することができた。
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