研究課題/領域番号 |
23520887
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研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
飯尾 唯紀 城西大学, 語学教育センター, 助教 (80431352)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ハンガリー / スロバキア / 東中欧 |
研究概要 |
本研究の目的は、ハプスブルク家統治下のハンガリーを対象として、近世多民族帝国における地域社会形成に宗教が果たした役割を明らかにすることにある。今年度は、(1)基礎的文献の収集・分析、(2)現地文書館における予備調査、(3)内外研究者との協力体制確立に重点を置いて研究を進めた。(1)に関しては、主にドイツ語圏の宗教改革、宗派化研究の近年の動向、ならびに当該主題に関するハプスブルク君主国を対象とした個別研究のフォローに努めた。また、国内およびハンガリーおよびスロバキアの図書館において、関連文献の調査・収集を行った。(2)に関しては、ハンガリーの国立文書館、教会文書館において史料状況調査と若干の史料収集を試みた。この結果、当初予定していたハンガリー北東部のほか、ハンガリー西部の改革派拠点(Papa)やヴェスプレーム県文書館において、教会の社会統合機能の分析に有益な史料群(多数の遺言状や救貧施設関連文書など)が存在することを確認した。(3)国内の近接領域の研究者とは、年度中に複数の研究会で意見交換を行った。また、ハンガリーおよびスロバキアでは、18世紀史を専門とする研究者、文書館員、教会関係者らと意見交換を行い、今後の本格的な史料調査と研究成果発表へ向けての協力をとりつけた。 なお、本年度は予備調査に重点を置いて研究を進めたが、その成果の一部を「近世ハンガリー王国再統合期における所領と教会」と題して2011年度西洋史研究会のシンポジウムで報告することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度の主要目的は、図書館・文書館での予備調査と内外研究者との協力体制の確立であった。 図書館における史料調査・収集はおおむね順調に進展した。文書館での予備調査に関しては、当初予定していた地域で十分な調査を行えなかったが、他の地域でそれを補うに足る史料群を発見することができた。 内外研究者との協力体制の構築については、新たに複数の国内関連学会、研究会に入会・参加し、人脈形成と情報・意見交換を行うことができた。また、外国研究者についても、ハンガリーおよびスロバキアの複数の大学研究者、文書館員を訪問して意見交換を行い、協力体制を築くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に従い、今後は(1)基礎研究の収集と問題点の整理、(2)文書館史料の収集完了と分析、(3)研究成果の発信を重点的に行う。 (1)については、日本には蓄積の薄い研究主題であることを鑑み、研究動向の整理を公にする。(2)については、すでに予備調査を済ませたハンガリーの文書館において、史料収集・分析を進める。(3)については、次年度の半ばから順次研究報告と雑誌論文への投稿を行う。最終年度には、雑誌論文や学会報告をまとめ、当該主題に関する総括と他地域との比較のためのモデル化の試みを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度においては、設備備品および消耗品費を利用して、引き続き海外の図書購入を行うほか、一時史料のマイクロフィルム利用に関連した諸機材を購入する。 また、旅費を利用して、ハンガリーなどにおいて合計40日間の史料収集、情報交換、学会報告を行う。その他、収集した資料の整理のために謝金を利用し、史料の国内送付のために連絡・通信費を利用する予定である。
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