本研究の目的は、ハプスブルク朝ハンガリー王国を対象として、近世多民族帝国における地域社会形成に宗教が果たした役割を多面的に分析することにあった。 研究期間内には、17世紀末から18世紀前半に時代を限定し、まず国王の政策や議会決議の分析を通じて政策レベルでの宗教の位置を確認した。また、地域社会での教会の活動や教会を巡る地域と王権の関係を検討するため、改革派教会文書館と、ジチ家文書館の関連史料、諸教会の巡察記録を中心に検討を行った。その結果、諸教会が勢力を競いつつ、また多民族からなる住民との摩擦を抱えながらも、復興期の地域社会の「準公共財」として不可欠の役割を果たしていたことを確認した。
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