歴史学において対話が不十分であるアメリカ史と近世イギリス帝国史の接合を図り、18世紀中葉に植民地総督秘書として北米を訪れたイギリス人トマス・ポーノルを取り上げた。彼の滞米中の見聞、特に先住民をイギリス帝国の要素としてどう扱うかをめぐる見解について資料を収集した。彼の発言と、帰国後に著した主著『植民地統治論』の内容を比較する予定だったが、ポーノルは数度に及ぶ『植民地統治論』の改訂の中でも、先住民に関する記述を加筆せず、先住民を重要課題と認めなかったことがわかった。しかし本研究によって得た先住民史と近世イギリス帝国史の知見は、研究期間中に執筆した複数の歴史教科書(共著)に生かすことができた。
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