ヴェネツィア貴族は従来、大評議会に世襲終身身分を持つ階層として定義され、その特殊性が強調されて来た。しかし、他のイタリア都市においては、軍事/政治エリート層としての12~13世紀の都市貴族の性格が強調されるようになってきている。この点を考慮して史料を読み直すと、ヴェネツィアもそのようなアイデンティティをある程度共有していることが観察できた。さらに従来、貴族身分形成の契機として位置づけられていたセッラータと呼ばれる一連の法令も、他のイタリア都市で見られた、整いつつある制度が親族の絆といかに立ち向かうか、という問題にヴェネツィアが与えた回答のかたちだと見ることができる。
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