21世紀の労働と余暇の問題を考えるうえで、余暇文明の到来を告げたフランスに着眼し、フランス人民戦線の余暇政策を、スポーツ・旅行・文化の3領域について検討した。「見世物としてスポーツ」を否定し、「自らが参加するスポーツ」を振興するために、運動場の整備やスキー振興策、さらには民衆飛行の分野にも政策は及んだ。旅行の分野では、割引切符や旅行積立貯蓄の導入、ユースホステルや観光地の整備による観光産業の育成、文化の領域では「壁の打破」を掲げて、図書館・演劇・映画・美術などを民衆に身近なものにしようとした。こうした政策が功を奏して、1936年はフランス人にとって戦後に到来する余暇社会の原点となった。
|