本研究は、ミノア期から前古典期までの長期間にわたる国家権力の担い手の変遷とそれに伴う宗教の諸相と変容について考察した。 クレタとペロポネソスでの現地調査の成果をふまえ、(1)ミュケナイ期の権力者は自らの天空神信仰を中心とする宗教に地母神信仰の先住民の宗教を取り込みながら宗教儀式を通して権力の維持強化を図ったことを解明した。(2)初期鉄器時代の宗教がどのようにポリス時代の宗教に変容したかを、クレタ島における法碑文の成立状況を題材に、法顕現のトポスとなる「聖なる空間」の象徴的意味をクレタ各地の聖所・神域・神殿の歴史的変遷に照らし合わせて考察し、アーケイック期に地母神から男性神への変容を解明した。
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