本研究の目的は、アンシアン・レジーム期の国王の裁判所・警察であったマレショーセを主たる研究対象として、フランス絶対王政の統治構造を官僚制、治安、裁判の側面から再検討することであった。最終年度の研究も、①フランスの古文書館における関係史料の収集、②史料の読解・分析、③論文執筆が予定された。その成果は以下の通りである。 ①については、9月に2週間強、渡仏し、国立古文書館、セーヌ=マリティーム県古文書館で史料収集に努めた。②に関しては、マレショーセにおける売官制、親任官制の運用実態を明らかにすべく、主として、ピュイ=ドゥ=ドーム県古文書館で収集した成員の就任・採用に関する史料の読解と分析を進めた。③としては、論文2本を執筆した。うち1本は「近世フランスにおける国王役人の昇進 ―騎馬警察隊員の昇進人事―」(『七隈史学』第16号、2014年、177~190頁)として公刊された。学会誌に投稿したもう1本の「近世フランスにおける騎馬警察隊員の退職(1720~1750年)」は現在、審査中である。 研究期間(平成23~25年)全体で見れば、上述の研究目的のうち、論文という形で実績をあげられたのは、とりわけ官僚制からの再検討である。当該期間に公表した4本の論文によって、18世紀前半のマレショーセにおける親任官制の実態をかなりの程度明らかにすることができた。また、官僚制が売官制に立脚していたアンシアン・レジーム期にあって、マレショーセという全国組織の数千人の裁判役人・騎馬警察隊員に親任官制を導入したことの重要性も強調できたと考える。しかしながら、この事実を、王権が16~18世紀に採った売官制に関する政策の流れ全体の中に位置付け、18世紀前半の政治・経済・社会状況の中で評価し、絶対王政の統治システムの改変として再検討するまでには至らなかった。治安面、裁判面からの再検討も含め、今後の課題としたい。
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