研究課題/領域番号 |
23520912
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
青木 康 立教大学, 文学部, 教授 (10121451)
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研究分担者 |
水井 万里子 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90336090)
川分 圭子 京都府立大学, 文学部, 准教授 (20259419)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 近代イギリス史 / イギリス議会 / 議会制統治 |
研究概要 |
本研究では、イギリス史における議会制統治モデルの実効性が、17~19世紀というイギリス議会制統治の確立期を通して実証的に検討される。議会制統治モデルの限界を示す実証諸事例から論点が明らかにされる。特に、イギリス政治史の上で特殊な政治性を保ってきた南西部地域を分析し、近世・近代の議会制統治の進展が国家統合の強化と同値であるかのごとく論ずるモデルの限界を示した上で、あらためて議会制統治論の可能性を提示する。これらの個別研究成果を平成25年度の最終年度に論文原稿として受け取り、26年度論文集として出版予定となった。 23年度は(1)国内研究会を東京で2回開催し、各人の個別の研究事例を共有した。(2)イギリス現地史料収集:連携研究者2名が予算を使用し渡英調査を行った。連携研究者はそれぞれの研究テーマ、個別実証研究に必要な史料を調査・収集した。 論文集の仮目次は下記である。 第一部「議席配分と地域代表」1.世コーンウォルにおける下院議員の選出様態(仲丸)2.五港統治長官(Lord Warden)の議員指名「特権」: 1680年代における公式化の試み(辻本)3.18世紀スコットランド選挙研究の課題(松園)4.18世紀イングランド西部の下院議員: 議員と選出区の関係をめぐって(青木) 第二部 「個別利害と議会」1.ブリテンにおける商業破壊戦の奨励と議会、王権1689-1713(薩摩)2.18世紀のブリストルと議会: ジャリット・スミスを手がかりに(一柳)3.奴隷貿易・奴隷制廃止期の西インド・インタレスト下院議員(川分)4.19世紀の議会文書と海難問題─ ローカル・ナショナル・インターナショナル(金澤) 第三部「議会以外の機関による利害代表の可能性」1.17世紀の議会における地域利害と産業規制-すず先買請負をめぐって-(水井)2.アルバート公によるコーンウォル公爵領の経営改善と議会政治(君塚)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個別実証事例研究の進展は、夏、春の各研究会での全員発表を通じて確認済みである。議会政治史の方法論や動向を、議会政治史プロパーの研究者から教示されつつ、必ずしも議会史を専門としない参加メンバーも議会史料の利用を含む、議会史の領域に踏み込みつつある。このことは、専門性が極めて高い議会史のアプローチを参加者全員がある程度まで共有する、という本研究の方向性にかなっている。 史料の収集については、連携研究者2名の渡航費の一部を補助することができ、イギリスの文書館所蔵の史料を使用した個別事例研究が深化することとなった。また、他の参加研究者も国内において議会関連のデータベースの利用を図り、早稲田大学の議会史料データベースへのアクセス、利用などの面で、大きな進展があった。 本課題で最も重要なのは研究成果の集大成としての公刊の問題であった。この点については、現在研究代表者が所属する立教大学の出版助成に応募し、立教大学出版会から論文集として公刊することを目標に設定し、個別研究論文の執筆を各自に依頼した。大きな成果として、南西部の議会制統治に関して、その地域的特性についての知見を共有し、数名の研究者が個別論文に活かすことができている点があげられる。今年度の研究会において代表者による南西部の議会政治についての問題提起と実証的な議論とその枠組みが得られたことにより、本課題の議論の基盤が構築された影響が大きい。 23年度(初年度)に参加者全員がモノグラフを執筆するという極めて実証レベルの高い研究成果を生み出す素地は整えられ、2年目の個別研究の進展と、3年目の論文原稿の最終的な編集作業へと、スケジュールがたれられ、ほぼそれに沿って研究が進んでいることから、上記のような評価をつけている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最大の課題は、実証レベルの高い議会制統治に関わる個別事例をいかに集約して発表できるか、という点にある。その意味で、初年度の研究会ごとに進展する各自の研究発表は極めて重要な進捗状況を示す指針となった。この方法は24年度にも継続して実施される。研究会での発表をベースに進展具合を調整しつつ、25年度の原稿提出を含めて早いペースで公刊まで進められるよう配慮する。 史料収集については今年度新たに2名から3名が予算を使用して渡英調査する。論文原稿提出まで時間的な制約があるため、23年度中に計画を立てた史料収集を優先して実行に移していく。行き先はブリストル・レコードオフィス、サマセット・レコードオフィス等の地方の文書館が主だったものとなる予定である。23年度に発生した繰越金は主として上記史料収集のための24年度海外旅費の不足分を補う形で使用することになる。 海外研究協力者ジョナサン・バリーの原稿は英文であるため、事前に日本語の論文提出と同時に作成依頼した全員分の英語梗概をイギリスに送付し、英語論文執筆の参考としてもらう。こうして受け取った英語論文は、研究代表者、研究分担者の責任で日本語訳し、最終的な論文集用の原稿とする。 最終年度の25年は、上記論文集の編集作業が主たる作業となるため、主に東京の立教大学を中心とした編集業務が実施される予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、まず、イギリスでの史料収集に係る海外旅費に研究費が使用されることが決定的である。2-3名の渡航、現地滞在に係る費用の一部に対して上記旅費を支給する予定である。これに23年度繰越金を加えて海外旅費として使用する。 さらに、23年度と同様に、国内での研究会を夏、春の2回実施する。この際、地方から参加する研究者に対して国内旅費を支給することになる。 図書費、備品購入など、必要に応じて物品費として使用する可能性もあるが、高額の物品購入に対する予算の使用は予定していない。
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