研究課題/領域番号 |
23520912
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
青木 康 立教大学, 文学部, 教授 (10121451)
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研究分担者 |
水井 万里子 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90336090)
川分 圭子 京都府立大学, 文学部, 教授 (20259419)
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キーワード | 国際研究者交流イギリス / 議会制統治モデル / イギリス近世・近代史 / 議会政治史 |
研究概要 |
今年度は、分担者、連携研究者が渡英し、文書館等で議会政治史に関連する一次史料収集にあたった。これらの成果は、2012年夏の研究会、2013年春の研究会という、2度の研究集会で、実証研究報告として発表された。 この報告をもとに、研究計画書に記載した近世イギリス議会政治史に関する論文集の編纂準備を開始した。具体的には、研究代表者による「イギリス西部議会政治史概観」「都市ブリッジウォーターと下院議員選挙」に関する2本の論文、分担者による「奴隷制廃止法案の成立過程」、「スタナリ議会」に加え、「ブリストル市の下院議員」、「コーンウォル議会政治史」「コーンウォル公領と議会」「海難と議会」「私掠と議会」「五港都市と議会」「スコットランド議会」についての実証論文が集まった。これらを、イギリス議会政治史を批判的に検証し、議会制統治モデルの実効性を探る意図を持って編集し、論文集の形に編纂を今年度に開始している。 これらのモノグラフを現段階で総括すれば、従来軽視されてきた鉱業、海事を含む地域利害の多様性、全国的に力を持つ商業利益集団に掛る利害調整の困難さ、ケルト辺境での地方統治の脆弱性などの具体的事例が、議会制統治モデルの限界を示す重要な論点として実証的かつ精緻に明らかにされつつあり、特に、イギリス政治史の上で特殊な政治性を保ってきた南西部地域の分析が進んだ。このように、議会政治史の実証研究を積み重ねることによって、これまでの議会制統治モデルの限界が提示されつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度までに、研究代表者、分担者、連携研究者、研究協力者のほとんどが、イギリスでの史料調査など、実証研究に不可欠な史料収集に取組み、一定の成果を口頭で報告した。このうち、「西部議会政治史概観」「都市ブリッジウォーターと下院議員選挙」「コーンウォル公領と議会」「コーンウォル議会政治史」「五港都市と議会」については、既に論文集用の原稿を提出している。他のメンバーの実証研究についても、全員が口頭での報告を複数回実施し、平成25年度9月末の論文提出〆切に向けて、最後のとりまとめ段階に入っている。この論文集は、科研が終了した後、平成26年度中に立教大学出版会からの公刊を企図している。 加えて、海外研究協力者である英国のジョナサン・バリー博士と、今年度、これまでの研究経過を検討し、論文集への執筆依頼を行い了承を得ている。 当初の目的「議会制統治モデル」に対する批判的な検討について、議会政治史にかかわる実証的な論文が10本以上執筆され、平成26年度内の論文集公刊の方向性が確立したことから、研究目的は順調に達成されているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後平成25年度という最終年度の活動として、まずは、論文集の公刊準備作業を詰めていく。論文集の原稿締め切り後、英文の梗概を執筆者から集め、海外研究協力者のエクセター大学ジョナサン・バリー教授に送付する。これらに対して、バリー教授の卓越した西部地方の都市に対する知見から、コメント原稿を獲得し、論文集に向けて分担者が英訳する。論文がすべて揃うまで、今年度は頻繁に編集会議を実施する。 また、今年度は春から研究協力者が複数名就職し、昨年度末に予定していた史料調査のための海外渡航が行えなかった。このことを踏まえ、今年度の前半に2名ないし3名が渡英調査の予定である。また、編集作業の一環として、イギリスのジョナサン・バリー博士を訪問し、論文集全体を見渡したコメント原稿を受領するため、分担者が海外渡航をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の経費の多くは、残された予算が許す限りの最終的な海外調査である。上述のように昨年度は複数名の研究協力者が所属変更を理由に海外渡航不可能な状況となったため、生じた次年度使用額と25年度の助成金をあわせ、25年度に代表者と分担者2名がそれぞれイギリスの文書館における最終的な史料調査を実施する予定としている。また、海外研究協力者であるジョナサン・バリー教授との研究打合せも11月ごろに実施予定である。したがって残額の大部分が海外旅費として使用される。 加えて、論文集の編者となる分担者水井が、研究代表者と出版前の綿密な打合せを実施するために東京の立教大学に出向く。これに国内旅費が使用される。さらに、英文原稿の下訳などのために謝金を使用することも想定されている。
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