研究課題/領域番号 |
23520913
|
研究機関 | 鎌倉女子大学 |
研究代表者 |
長谷川 岳男 鎌倉女子大学, 教育学部, 教授 (20308331)
|
キーワード | 西方ギリシア人 / 植民 / マグナグラエキア / フォカイア / アイデンティティ / タラス(ターラント) / マッサリア(マルセイユ) / シチリア |
研究概要 |
本年度はようやく西方ギリシア人に関する遺跡の現地調査を実施することができた。特に昨年度、文献や史料で分析したマッサリア(現マルセイユ)やニカイア(現ニース)で現地踏査を夏に行った。それに先立ちロンドンの古典学研究所付属図書館で約1週間の文献調査を行い、我が国では読むことのできない文献・史料にまだ不十分ではあるが目を通し、そこで最終確認をした上で、マルセイユで博物館、さらにロケーションの調査をしてから、やはりギリシア人が居住し、大きな博物館があるアルルにも出向いて終日調査をして、その後、ニースに移動して港の形状やギリシア人の居住区、さらに発掘されたものが収蔵された考古学博物館、さらにそこにあるローマ期の遺跡も併せて調査した。マルセイユとニースの港の形状やロケーションには類似性があり、今回は時間の関係で実施がかなわなかったが、コートダジュールやラングドック、イベリア半島のギリシア人居住地との比較のための基礎材料は収集できたと思われる。 ロンドンの古典学研究所付属図書館では様々な地域の個別事例の研究から学ぶとともに、そもそもギリシア人の植民をいかに捉えるべきなのか、特に帝国主義の経験が植民概念に影響を及ぼしているのではないか、という昨今のポストコロニアル的な視点からの指摘をなした研究にも触れ、そこから学ぶことも多かった。すなわち概念的枠組の脱構築もこの研究には必要であることを実感し、それらの研究文献を収集し、講読して最終的な研究成果報告に役立てる準備を秋以降、行った。一方で次年度に実施予定のマグナグラエキア調査のために、当地のギリシア人植民に関する研究の収集・講読も併せて行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
二年目に予定していた海外調査ができずに本年度に廻した結果、今年度に行うべきマグナグラエキアなどの調査を実施することができなかったため、まだ西方ギリシア人の植民実態を総合的に分析するための材料収集が終わっていないことと、ロンドンの古典学研究所付属図書館での文献調査もまだ十分にはできていないために上記の評価とした。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は研究補助金助成の最終年度にあたり、本来、これまでの研究を総合して成果をまとめるべき年度であるが、先に述べたようにまだ調査が十分ではないため、研究期間を1年延長する予定で、本年度の研究計画を立てた。まずマグナグラエキア(イタリア南部)での現地調査を昨年、単独でやって限界を感じたため、本年度はギリシア史研究で実績のある宮﨑亮氏を研究協力者に迎え、彼とともにこの夏に実施する。帰国後、これまでの研究成果をまとめるとともに、4月にアテネで行われたヨーロッパ研究者との研究コロキアムに、講義期間に実施されたため本務校から出張の許可が下りずに参加できなかったため、そこで報告予定の原稿を本年度中にどこかで発表もしくは活字にしたいと考えている。そして延長した来年度は再度、ロンドンの古典学研究所付属図書館で現地の研究者との意見交換を含めた最終確認の調査を行い、最終的に報告書を作成する計画である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
交付二年目に実施予定であった海外調査を行えなかったことと、必要機材(デジタルカメラ、デジタルビデオ)の購入がなされていないため。 デジタルビデオはデジタルカメラで代用できるので、その購入をやめる代わりに、南フランスでの調査の際に、タブレット端末は写真の整理には好ましいが、データ処理には不便であることが判明したので、モバイルのパソコンを購入する費用に充てることと、やはり単独での調査には限界を感じたので、本年度は研究協力者を迎え、その旅費に充当する予定である。
|