研究実績の概要 |
本年度は完成年であるため、これまで研究テーマに関する収集した史料、研究文献、あるいは現地踏査で撮影した写真などを整理、分析を集中的に行った。 本テーマの眼目である現地人からの視座という視点を導入するためには、それまでのギリシア人、ローマ人の執筆したetic的な言説の問題を解明する必要がある。そこで西方ギリシア人に関する史料学的な研究が不可欠になる。なぜならば史料は断片的な形でしか現存しておらず、このような断片史料についての見直しが近年、急速に進んでいるからである。特にすでに散逸したヘレニズム期の叙述をローマ期の著作者が切り取って自らの著作に組み入れた情報の性格の再検討が必須となろう。そのため西方ギリシア人についての実証的な研究と共に史料論についての検討を進めた。 次に最後の仕上げとして2月にロンドンの古典学研究所において文献、史料の確認を行った。現地人からの視座というアプローチでは文献のみならず、考古学的な成果が不可欠であるため、それらを掲載した、我が国では見ることのできない調査報告書を中心に検討した。 年度末の3月には二つの研究会(フェニキア・カルタゴ研究会、Asia Minor Workhop, Kyoto University, 18-20 March 2016“Under-standing the process of Hellenization in Asia Minor”において成果報告を行った。最終的には一定の成果をあげたと思えるが、新たな課題も出てきたため、今後もこの研究の継続を進める予定である。
|