研究課題/領域番号 |
23520915
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
中谷 功治 関西学院大学, 文学部, 教授 (30217749)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ビザンツ / テマ |
研究概要 |
昨年度末に発表した「レオン3世政権とテマ」(『関西学院史学』38号)ならびに昨年7月に発表した研究ノート「ビザンツ艦隊をめぐる考察―7世紀後半ー8世紀初頭を中心に―」の二つの研究を受けて,テマ制度の起源について再度検討した。具体的には,オストロゴルスキーのヘラクレイオス帝改革説でも,その後の漸次的成立説でもなく,1980年代に井上浩一氏が提起した「自生的テマ論」を批判的に再検討した上で,レオン3世の治世でのテマ連合政権の成立(中谷の仮説)と結びつけてその成立を考察した。この議論については,第9回日本ビザンツ学会において報告し,問題提起をした上で,学会誌『西洋史学』に投稿し,掲載が決定した。 また,テマ制度の成立に深く関係するテマ反乱(7世紀~9世紀前半)についても分析を加えて,研究の暫定的なまとめを研究ノート「テマ反乱についての覚え書き」として『関学西洋史論集』(35号,2012年3月,63-74頁)に発表した。 それ以外での本研究に関連する学術的な成果としては,(1)学会誌でのフォーラムの編集「シンポジウム:ビザンツ文明を考える」(『西洋史学』238号,2011年,39-40頁),(2)書評として,「井上浩一著『ビザンツ 文明の継承と変容」(京都大学学術出版会,2009年『西洋史学』239号,2011年8月,78-81頁),さらに雑誌でのレビュー「ビザンツ国家はいかに再生したか―小林功氏の論考への疑問―」(『歴史学研究』891号,2012年4月号,34-39,61頁)がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記したような成果により,研究はおおむね計画どおりに進んでいるといえる。具体的には,研究の主な成果は以下の4点にまとめることができる。(1)テマ制度の形成プロセスについて,帝国艦隊との関係を明確化した。(2)7世紀末から9世紀初頭にかけてビザンツ帝国において頻発したテマ反乱の特質と意義を確認した。(3)テマ制の成立の問題を研究史をもとに明確化し,独自の形成についての学説を提示できた。(4)以上の成果について,査読審査のある学会誌2編と学内紀要1編に投稿し,掲載ないし掲載予定にある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究の基本方針は,「中期ビザンツ帝国におけるテマ制度の発展」としてまとめることができる。すなわち,前年度に実施したテマ制度の起源についての研究を受けて,8世紀初頭に成立したと見られるテマ制と小アジアのテマ諸勢力による軍事的な連合政権の関係をより深く考察し,その後の展開について分析することである。 具体的には,レオン3世を継いだ彼の長男コンスタンティノス5世の治世(741-775年)を中心に,(1)治世初頭のアルタバスドスの反乱の意義,(2)766年の大規模な陰謀事件の背景と影響,(3)ブルガリアを中心とする皇帝親征の展開の意味,などについて考察する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
関連する図書費(中期ビザンツ帝国史関連図書)として280,000円海外出張のための旅費(トルコ共和国)として550,000円国内出張のための旅費(東京,東京大学附属図書館)として50,000円消耗品費・謝金費・その他として20,000円をそれぞれ予定している。
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