研究課題/領域番号 |
23520915
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
中谷 功治 関西学院大学, 文学部, 教授 (30217749)
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キーワード | ビザンツ / テマ / 帝国 / テマ制 / テマ反乱 |
研究概要 |
2011年度より,中期ビザンツ帝国の軍事行政制度であるテマ制に関連した研究を継続してきたが,その成果のひとつとして,小アジアを中心とする地方勢力であるテマに対抗する存在としての中央勢力(とりわけ帝国の首都コンスタンティノープルにおける重要団体と考えられる元老院)の動向を分析をし,「7・8世紀におけるビザンツ中央政府の動向-元老院を中心に-」『人文論究』(62巻1号,2012年,1-18頁)を発表した。 また,当初の予定どおり,8世紀のコンスタンティノス5世の治世におけるテマの動向について論文を作成する予定であったが,別個の課題のために研究は中途にある。その主な理由であり,かつ当初の予定外の研究として優先させたのは,中心課題であるテマ反乱をめぐる時代区分の考察である。研究代表者は,7世紀末から9世紀初頭にかけてを「テマ反乱の時代」として把握することを目指しているが,近年刊行されたブルベイカーとホルドンの共著『イコノクラスムの時代におけるビザンツ:歴史』(2011年)が設定する680~850年頃という時期設定の妥当性について検討した。結果として,当初の予定通りの「テマ反乱の時代」という設定が妥当であることが確認できた。 それ以外の業績としては,トルコ共和国のリキア地方に出張し,テマ行政の起源を探るための資料である印章について調査した。なお,9世紀におけるテマ=ケルソンの創設を含む論考「中期ビザンツ時代のケルソン―帝国北方外交の展開―」(共著『ビザンツ 交流と共生の専念帝国』昭和堂,69-90頁)が間もなく刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」にも記したように,昨年度の研究計画の中心をなすコンスタンティノス5世とテマとの関連についての考察が,論文としてまとめるに至っていないが,これは「テマ反乱の時代」という時代区分の設定の当否について,最新研究である『イコノクラスムの時代のビザンツ帝国』を読み,再検討することを優先させたことにある。また,昨年度はアメリカ合衆国のダンバートン・オークス研究所でのリサーチを実施せず,トルコ共和国での調査による資料のデータ収集を行ったことも研究が遅れ気味となる要因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究の基本方針は「7世紀末~9世紀初頭におけるテマ反乱の考察(総括)」としてまとめることができる。すでにこれまでにテマ制度の起源について仮説を提示し,7世紀末~8世紀中頃までのテマ反乱の展開については小アジアのテマ諸勢力の政権掌握を明らかにしてきた。よって最終年度はテマ反乱の大規模化とその終焉の過程を明らかにすることが目標となる。 具体的には,(1)8世紀後半から9世紀初頭における中央政権とテマ勢力との対抗関係の分析と(2)スラヴ人トマスの反乱のプロセスを最後のテマ反乱として位置付けること二つが主な課題となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
関連図書費(中期ビザンツ史関連図書)として 280,000円 海外出張のための旅費(アメリカ合衆国)として550,000円 国内出張のための旅費(東京,一橋大学図書館)として 50,000円 謝金費・その他として 20,000円を,それぞれ予定している。
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