本年度は研究課題「中期ビザンツ帝国におけるテマ制の総合的研究」の最終年度として,「テマ反乱から見るビザンツ帝国」という視点からの7世紀末~9世紀初頭の帝国政治の分析において,残されていた課題に取り組んだ。ひとつは,テマ反乱の実行主体である地方に対する中央,コンスタンティノープルの諸勢力を分析するため,8世紀後半を中心とする首都での陰謀事件を網羅的に検討した。その成果は平成26年6月刊行予定の『歴史家年報』第9号に「イサウリア王朝下の陰謀事件をめぐって-8世紀のコンスタンティノープル-」として掲載される予定である。第2は最後のテマ反乱としてのスラヴ人トマスの乱についての考察である。従来,社会経済史的視点よりユニークな反乱として注目されてきたトマスの乱を,当研究では最後のテマ反乱と捉えることが可能であることを主張した。そして,このトマスの反乱をもって事実上終焉するテマ反乱について,なぜこの反乱をもってテマ反乱は見られなくなるのか,その理由を皇帝政府による中央集権国家の再確立という面から説得的に説明することを試みた。なお,この成果は「9世紀初頭における帝位継承とテマ反乱―スラヴ人トマスの乱を中心に―」として,平成26年度の最後に『関西学院史学』42号に掲載される予定である。
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