本研究は、ローマ時代のイタリア半島中部における土器生産から消費までの地域動態を詳細に分析することを目的としている。まず、主に調理用途に使用される耐熱性土器について、その主要5器種の帝政期から古代末期にいたる100年単位のおおまかな変遷の様相を分析した。さらに、それらの変遷にはローマを中心とする中北部と、ナポリを中心とする中南部で地域差が見られることも明らかにした。これらの変遷と分布の分析から、新しく認識した生産単位を含め、小規模な需給関係が地域のなかで複雑にからみあっている状況を捉え、水運を媒介としない程度の小規模な経済圏内における地域の動態の一端を明らかにした。
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